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 ふと気が付けば、いつも裸で過ごす事を強要されているはずなのに、肌触りのいい淡い青色のパジャマを身に付けている。  たしかに奈津の言う通り、和真は何も覚えていなかった。けれど、往診をした医師は和真の体を見てしまったはずだ。 「他人に見られたくなかった? だったらちゃんと食べないと」  羞恥に震え始めた体を奈津が抱きしめて告げてくる。それから……なぜか洋服に着替えさせられ、和真はかなり狼狽(ろうばい)した。  服を着たのはどれくらいぶりの事だろう?  これまでは、ボディハーネスの上にコートを羽織るくらいしか許される事がなかったから、着せられたシャツと細身のパンツが自分ぴったりのサイズなのにも内心とても驚いた。 「歩ける? 無理なら車椅子を用意するけど」 「大丈夫です」  点滴を受けたせいなのか? 吐き気はすっかりおさまっており、奈津に促されて何歩か脚を進めると、多少ふらつきはしたものの、それでも歩くことはできた。    「和真、行くよ」  手招きをされ、「今は歩いていいよ」と告げられる。どこに行くつもりなのだろう? と思いながらもついていけば、玄関に設置された長椅子に座るようにと命じられた。 「足、出して」  混乱している和真をよそに、シュークローゼットから取り出したローファーを奈津が履かせてくれる。 「おいで」  言われるがままに立ち上がり、玄関を開けた奈津に続いた和真だが、どういう訳かドアの手前で脚がピタリと止まってしまった。  途端、心臓の音がうるさくなって、体がふらりとよろめいてしまう。

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