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「全部飲めよ」  口腔から陰茎を引き抜きながら、奈津が和真へと声をかけるが、返事ができるはずもない。開口具を嵌められているから、嚥下することは困難だろう。 「奈津、こっちも抜いていい?」 「いいよ」  奈津の返事に頷いた薫は、アナルプラグを回転させながら引いていく。きっと、口からペニスが抜けた瞬間、和真は嘔吐するだろう。そして、プラグの抜かれた後孔から浣腸液を漏らしながら、意識を絶ってしまう筈だ。 (かわいそうに)  細かく震える姿を見て、哀れだと薫は思った。そう仕向けたのは自分と奈津だが、罪悪感が微塵も無いわけではない。 (まさか、こんなに違うモノだとは思わなかった)  今まで2人が飼ったペットと、和真はまったく違っている。  それは、何故か?    「血……か」 「薫?」  小さく呟いた薫の耳へと、奈津の声が聞こえてきた。それと同時に和真が激しく咳込んで、予測したとおり嘔吐する。  床に敷かれた防水シートにボタボタと嘔吐物が落ちるが、あまり食べていないせいか? その量はかなり少なく見えた。 「どうかした?」 「ああ、なんでもない」  奈津に視線で促され、アナルプラグを抜こうとした時、薫はあることに気がつく。 「和真、イったのか?」 「うぐぅ」  ペニスへと指で軽く触れると、まだ意識はあるようで、和真の体が小さく震えた。 「マジ?」  開口具を外しながら尋ねる奈津へ頷き返せば、「吐きながらイくとか、やっぱり和真は苦しいのが好きなんだ」と、嬉しそうな笑みを浮かべる。 「……めんなさい、ごめんなさ……」  聞こえてきたのは、かなり掠れた和真の声。  許可無く達してしまったことを、謝罪しているのだろう。表情は見えないけれど、しゃくりあげる様子から、彼が泣いているのか伝わった。  「そうだな。勝手にイくなんて悪い子だ」  引き抜きかけたアナルプラグへと、圧を掛けながら薫が告げれば、苦しそうに喘いだ和真の細い体が痙攣する。  縄の食い込んだ青白い肌が淫靡に揺れる光景は、彼が本心から望んでいないと分かるだけに、美しく、倒錯的だ。きっと、心と身体の乖離(かいり)に苦しみ、近いうち、和真は完全に壊れるだろう。 (それで……いいのか?) 「うっ、あっ……あう」  アナルプラグを引き抜いた薫は「先に使う」と奈津へと告げ、間髪入れずに和真の後孔を自身で深く貫いた。

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