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 穿つたび、悲鳴じみた嬌声が部屋の空気を揺らし、粘度の高い浣腸液が結合部から(あふ)れてくる。 「和真、きもちいい?」    和真の髪を掴んだ奈津が、優しいともとれる声音で問いかけた。  奈津と自分は良く似ていると言われるが、こんな時見せる妖艶さは、薫と全く異なっている。 「……くるし、くるしい。たすけてっ」 「違うよ和真。きもちいい……だろ」  嘘をついた唇へと、奈津がキスをするのを見て、薫の下肢はさらに熱を帯びて昂った。チリンチリンと鈴の()が響き、縄に吊られた和真の身体が不安定に揺れ動く。 「ぐっ……んうっ!」  和真の下腹部を手のひらで()し、悦い場所ばかりを何度も穿てば、再び絶頂を迎えた身体が、二度、三度、と大きく揺れた。そして、限界を超えたであろう和真はそのまま脱力する。 「起こすか?」  同時に達した己の性器を引き抜きながら尋ねると、奈津は首を横へと振り、「今日は終わりにしよう」と微笑んだ。 「和真は2回もイっちゃったから、起きたらブジーを挿れないと。ここのところ甘やかし過ぎた。薫もそう思うだろ?」 「そうだな」  和真の身体を戒める縄を解きながら、返事をする。先日、和真に休息を与えようと提案したのは薫のほうで、奈津はそれに同意をした。しかし、彼の中では、それすら次の嗜虐へ向けての準備でしかなかったのだろう。そして、薫も同じ考えだと思っている。 (さて、どうしたものか)  二人で飼ってはいるけれど、実際には、和真は奈津の所有物だ。これまで共有したペットとは、そこが違うところだった。  彼は甘やかしたと言っているが、休ませようと思ったのは、薫の中では紛れもない本心で――。 「あとはやるから奈津は休め。疲れてるだろ」 「ありがとう。そうさせてもらうよ」  近づいた奈津が薫の髪の指で()き、頬へ唇を寄せてくる。促されるままキスを返し、しばしの間舌を絡ませた。  奈津が今、自分へと向ける穏やかな笑みは、他の人間に向けられることはない。逆に、和真をはじめ、これまで飼ってきたペット達へと向けた激情が、自分へ向けられることはない。 「夕飯には起こすよ」 「ああ、おやすみ」  ベッドルームへと入っていく後ろ姿を見送ったあと、薫は視線を和真に移し、白い肌へと色濃く刻まれた縄の跡を指でなぞった。

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