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「とりあえず今はゆっくり休め。体調が安定したら、俺が知ってること、全部話すから」
その、何かを決意したかのような声色 に、和真の心臓は音を速める。
「いったい、なにを……」
告げようとしているのか? 尋ねようと口を開くが、自分から話すことは禁止されているため、和真は途中で口を噤 む。すると、ため息を吐 いた薫の指が唇へと触れ、
「今、和真は自由だ。ここを出ていく事は許してあげられないけど、何を言っても怒らない」
と、思いもよらない事を言われた。
「どうして?」
「どうしてだろうな」
質問に、首を傾 けた薫が髪を撫でてくる。二人によって囚われてから、一度も切っていない髪は、肩へと届くくらいに伸びており、時間の経過を物語っていた。
「これも外そうか」
質問への返事は貰えなかったけれど、再度尋ねる勇気もない。だから、黙って身体を委ねていると、革の首輪へ触れた指先が、そこを軽くノックしてきた。
「また震えてる。"はい"って答えたら酷い目にあうと思ってる?」
「……ごめんなさい」
思考を薫に見透かされ、混乱した和真は謝罪を口にする。彼は気にした様子もなく、「少し上を向けるか?」と、穏やかな声で問いかけてきた。
いつもの命令口調とは違い、促すような言い方に、戸惑いながらも和真は首を反らして待つ。と、薫の指が首輪の留め具を器用に外した。
それから、薫は和真の身体を持ち上げ、自らの膝の上へと乗せる。片腕で、背後から腹のあたりを抱き、もう片方の手を動かして、和真の襟足 の髪をかきあげた。
「ここ、少し痕になってるな」
「んぅ……」
背後から、項 へと触れた感触に、上擦った声が漏れてしまう。
「痛む?」
「……あっ、だいじょうぶ、です」
そこに口づけられたのだと、分かった瞬間身体が甘い熱を帯びた。
「大丈夫って感じじゃないな。和真、気づいてる? ここ……」
「……んぅ」
腹を支える手のひらが、下半身へと降りてくるのを止められない。つい先ほど、『何を言っても怒らない』と言われたばかりだが、心と身体に深く根を張った服従心は、すぐに拭えるものではなかった。
「勃ってる」
寝衣の薄い布地の上から性器へと触れ、内緒話をするみたいに、耳元で薫が小さく囁く。
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