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 ***  シャワーを浴び、ドライヤーをかけ終えた薫がリビングへ足を踏み入れると、和真はソファーで眠っていた。  結局、少しの食事をとった後、和真を先に風呂へと入れた。入れたといっても、彼が自分で出来ることはさせたから、薫は服を身につけたまま、彼がのぼせてしまわないように、見守っていただけなのだが――。  脱衣所にある椅子へと座らせ、ドライヤーで髪を乾かしていたところ、いつの間にか和真は眠ってしまっていた。ちょうど良かったと思った薫は、彼をソファーへと運んでから、自分も手早くシャワーを済ませて戻ってきたという訳だ。 (よく眠ってる)   大きめのクッションに(もた)れて眠る和真の横へ立ち、(かたわ)らにあったブランケットを細い身体にそっと被せた。触れて起こしてしまわぬよう、自身は違うソファーへと座り、ペットボトルのミネラルウォーターを一口飲む。  ここへ和真を連れてきてから、二日が経った。  きっと、奈津は驚き、それから激怒しているだろう。  彼の気質は薫が一番理解している。  生まれてから今日に至るまで、仕事を除いた時間のほとんどを、奈津と一緒に過ごしてきた。だから、薫の中の空虚感は予想よりもはるかに大きい。なにせ、一応用意はしていたが、本当に和真を(さら)う事になるとは思っていなかった。 「……んぅ」  考えに(ふけ)っていると、小さく呻く声がする。   (うなされているのか?)  苦しげに歪むその表情を眺めながら、今、突然気が変わり、眠る和真を犯したならば、どんな反応を見せるのだろう? などと、考えてしまう自分自身の業の深さに、薫は思わず苦笑を漏らした。 「和真」  とりあえず、和真の側へと移動してから、薄く色づいた頬を手のひらで包み込み、その耳元で囁くけれど、起きる気配はまるでない。  「んっ……うぅ、……たす……けて」  掠れてしまった細い声。もし、これが三日前ならば、例え夢であったとしても、和真は許してもらえない。助けを呼ぶことは、(すなわ)ち拒否だと決めつけられた上、仕置きと称して厳しく折檻されただろう。 「和真」 「……アッ、カオル……ナツ、たすけ……」  途切れ途切れに呻く声が、自分の名前を呼んだ途端、下半身へと淫らな熱が集まった。 「ここにいる」  ブランケットを捲り上げ、着せてあるパジャマの前ボタンを一つ一つひらいていく。そして、胸の尖りを飾るピアスを指でカチカチと刺激した。 「ふぁ、あっ……ん」 「ここ、好き?」  乳首の先端を爪で弾き、弾力を確かめるように、指先でクルクルと()ねる。と、あえかな吐息を漏らした和真が、呂律の回らぬ甘い声音で「すき」と答えたものだから、薫はひとつ舌打ちをしてから、覚醒を促すために和真の身体を揺さぶった。

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