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「ああ、だから、奈津を呼びに行った。本人はかなり錯乱(さくらん)してたが、だからこそ……本音なんだと思う。それを踏まえてひとつ提案がある。奈津にとって和真が道具でしかないなら、俺に譲って欲しい」  奈津はこれから実家へと戻り、いずれは結婚するだろう。そうなれば、今の関係を続けることなどできやしない。これまでの事を思い起こせば、和真がどうして自分と奈津から愛されたいと思ったのかは分からないが、薫自身が和真を愛しいと思う気持ちに偽りは無い。 「もちろん、俺は奈津を愛してる。これからもそれは変わらない。このまま……和真と一緒に姿を消すことも考えた。でも、ケリをつけなきゃ奈津も和真も前に進めない。だろ?」  包み隠さずに本音を告げれば、「なるほど」と答えた奈津は、少しの間沈黙した。 「言いたいことは分かった。確かに薫の言うとおりだと思う」  和真の首へと舌を這わせ、「薫はいつでも論理的だ」と奈津は呟く。 「ふぅ……んぅ」  何も知らない和真の喘ぎが、やけに空しく耳へと響いた。 「けど、試すような事を言われるのは好きじゃないな。俺が出す結論も……もう決まってるんだろ?」  こちらを見上げる奈津の唇は美しい弧を描いているが、その瞳には苛立ちの色が浮かんでいる。 「買いかぶりすぎだ。自分の事だって分かっちゃいない」  奈津が怒るのも当然だ……と思った薫は、返事をしながら心の中で謝罪をした。  互いの事なら何でも分かると思っていたが、実際にはそうではない。彼が"理論的だ"と皮肉ったとおり、それらしい理由を並べる自分は、見たくない物から逃げているだけの臆病者だと分かっていた。  ***  クチュクチュと指を舐めしゃぶる音が頭の中へと響きわたる。自分を挟んで二人が何かを話しているのは分かったが、内容を知りたいなどとは思わなかった。 (これで……終わる)  会えずにいた奈津と薫とが久々に愛し合うための、自分は道具だ。それが終われば記憶を消され、元の生活へと戻れる――はず。 「うぅっ!」  朦朧とした意識の中で、拙く思考を巡らせていると、口腔内から薫の指が引き抜かれた。同時に体を(かつ)ぎ上げられ、バスルームへと運ばれる。それから、履いていたズボンと下着を脱がされて……1人裸になった和真は羞恥に体を震わせた。  さらには、四つん這いの格好を強いられ、着衣を乱さぬ二人によって、体の隅々までもを丁寧に洗われる。 「あ……あぁっ!」  突如襲った快感の波に、抑えきれない喘ぎが漏れた。  ボディーソープを(まと)わせた手が身体中を撫でさする。彼らの指が引っ掻いた傷を掠めるたび、ヒリヒリとした痛みが襲い、それすら愉悦と感じた身体はヒクッヒクッと痙攣した。 「やっ……あ」  必死に呼吸を整えていると、胸の先端を掠めた指が、固くしこった乳首を摘まんでピアスごと下へ軽く引き――。 「アウッ! あぁ……」  刹那、電流のように背筋を愉悦が突き抜ける。怯えた和真は這って逃げようとするけれど、たしなめるように尻を叩かれ、間髪入れずに後孔の中へズプリと指が差し込まれた。 「あっ、あぁ……あうぅッ!」  久々の挿入感に和真は背中をしならせる。 「はぅっ……うう……ん」  グチュグチュと中を掻き回され、そこから生まれるもどかしい熱に悶えることしか出来ずにいると、奈津の指はあっというまに数本にまで増やされて……狭い肉壁を拡げるようにバラバラと中で(うごめ)きはじめた。

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