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「優しく……ね」
哀しげな色香を放つ虹彩は、焦点がまるで定まっておらず、だからこそ……和真が本音を漏らしたのだと奈津は悟った。
「いいよ」
殊更甘い声音で告げてから、和真のペニスを口へと含み、裏筋から雁の括れへと舌を這わせて吸い上げれば、萎えていたそれは僅かに硬度を取り戻した。
「あっ、ああっ」
すでに出す物は尽きてしまっているのだろう。和真は脚をバタつかせ、耐えきれないといったように、首を左右へと何度か振る。
しかし、拒絶はされていないようだから、舌を尖らせ尿道口を抉るように舐めてやると、甘い吐息を漏らした和真が拙く腰を揺らしはじめた。
「う……うぅ……ん」
そういえば、快楽だけを注いだことが、これまで何回あっただろう?
そんな事を考えながらも、『頃合いだ』と思った奈津が視線で薫へ合図を送れば、頷いた彼が和真の横へと移動して、クッションを頭の下へと差し入れた。
「挿れていい?」
ぺニスから口を離した奈津が、脚を肩へと担ぎ上げながら尋ねると、虚ろにこちらを見上げた和真が「お願い……します」と返事をする。
先刻からずっとそうだが、教え込んだ言葉を和真が紡ぐたび、自分達がそう躾たのにも関わらず、じれったいような感情が、胸の奥からにじみでた。
手早くズボンを寛げてから、猛っている己の性器を後孔へと押しあてる。途端、待っていたかのように肛門がヒクリヒクリと蠢動した。
「あっ……うぅっ……ん」
少しずつ、確かめるように奈津は腰を前へと進め、一ヶ月ぶりに内壁を拓く感触を堪能する。
視線の先では、薫が和真の顔を横へと向かせており、はくはくと開閉している小さな口へと指で触れてから、自身のぺニスを近づけていた。
「嫌?」
頬を撫でながら薫が告げれば、無意識だろう……和真はすぐさま唇を開き、吸いつくように彼のペニスを口へと含む。
「いい子だ」
「ん……んぅ」
薫の放った蕩けるような褒め言葉に、和真のアナルが伸縮した。
「上手」
更に奥へと入り込みながら、和真の下腹をそっと撫でる。と、悦ぶみたいに体が震え、白い肢体が薄紅に染まった。
「なあ薫、俺はどうすればいい?」
浅い場所にある愉悦のツボを穿ちながら、奈津は薫へと問いかける。少し前までの自分が聞いたら、きっと驚くに違いないが、これまで経験したことの無い感情が、奈津の心を乱していた。
「和真の望みを叶えるかどうか……って話?」
「そう。さっきまで、何とも思わなかったけど、気が変わりそうだ」
「流石に同意できないな。約束は約束だ」
「だよな」
薫の返事はもっともだが、それが彼の本音だろうか? 和真の願いを叶えた後、悔やまないと言いきれるのか?
なにせ、薫は和真のことを『愛しい』と思っているのだ。
(分からないな)
では、奈津自身はどうだろう?
この執着は愛ではないと思っていたが、果たして本当にそうなのか?
「どうせ解放する気は無いんだろ? なら、壊してやった方がいい」
暫し考えに耽っていると、薫が声をかけてくる。
「お見通しって訳か」
「あの状況だ。奈津の力を知ってれば、俺じゃなくても分かる」
和真が聞けば、絶望を更に深めるであろう会話だが、無心にペニスを舐める和真には、二人の会話が聞こえていても、理解まではできない筈だ。なにせ、口腔内を擦られることで、愉悦を感じる体にしたのも奈津と薫なのだから。
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