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 ソファーではいつも2人の間に座っている。以前は2人の足元の床が和真の定位置だったから、いつまた彼らに強制されてもおかしくないと思っていた。そうやって、自身の思考に予防線を張っておけば、最悪の結果になっても受けるダメージは少ないはずだ。   「和真、ご褒美くれる?」  そう奈津から言われたのは、ワインを飲んでから20分ほどが経った頃。テレビ画面には2人の選んだ洋画が映し出されており、刑事役の主人公がバーで出会った女優とベッドへ入っていた。  ポルノ映画ではないものの、こういったシーンを他人と一緒に観ると、悪いことをした訳でもないのに後ろめたい気分になる。 「ご……褒美?」  反芻しながら奈津を見上げれば、頷いた彼が「そう。俺、物分かりが良かっただろ?」と言ってから、頬へと軽く口づけてきた。 「嫌なら断っていいから」  反対側から薫に告げられ和真は小さく頷き返す。  久しぶりに飲んだせいか? 頬が火照り、ふわふわとして気持ちがよかった。 「もう一度、ピアスを開けてもいい?」 「……え? んうぅ」  思いもよらない奈津の言葉に驚いた和真の唇は、次の言葉を紡ぎだす前に薫のキスに塞がれた。軽い触れ合いを繰り返すうち、思考が徐々に溶けていく。 「こことお揃いのやつ。もう一度付けてほしい」 「んっ……ふうぅ」  シャツの上を滑った指が、胸の尖りを飾るピアスを探り当て、クニクニとそこを刺激する。刹那、痺れるような愉悦が背筋を這い上がり、キスの合間にあえかな吐息が漏れてしまった。 「……お揃い?」 「そう。もう外してからだいぶ経つけど、塞がりきってはいないと思う。だから……」  奈津の言葉に呼応するように、薫の手のひらが下半身へと移動する。器用な動きでズボンをずりさげ、緩く勃っている和真のペニスへ触れた時、ようやく理解ができた和真は体を僅かに強張らせた。 「ダメ?」  (とろ)けるような薫の声音が耳の側で響いた途端、以前そこへと付けられていたピアスの存在を思い出す。胸のピアスと同時に開けられた亀頭のピアスは、ブジーを常用され初めてから外されることが多くなり、いつのまにか付けられることは無くなっていた。 「和真、俺にもキスして」  奈津の声に操られ、ねだられるままにキスを返せば、「想像した? ここ、濡れてきてる」と、耳朶(みみたぶ)を舐めた薫が囁きかけてくる。 「んっ……うぅ」  尿道口を何度も擦られて自然と腰が揺れてしまう。そんな和真を嘲笑(あざわら)うことなく、キスの合間に「愛してる」などと囁くから、さらに乱れてしまうのがここ数日の流れだった。  挿入はされないし、苦しみや痛みを伴う行為もない。甘い愉悦に溺れ続ける毎日だが、和真の体の奥底には、それを物足りないと感じてしまう自分がいて――。 「いいよ、イッて」 「ふ、うぅっ……ん!」  竿を薫に扱かれながら、会陰部分を奈津に押されてひとたまりもなく射精をした。浅く呼吸を繰り返し、解放の余韻に呆けていると、会陰を撫でた奈津が「ホントはここに空けたいんだけど」と告げてくる。 「だって。どうする? 和真」    奈津と軽くキスを交わした薫からそう問われるが、うまく思考が回らなかった。

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