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「昨日の夜、2人で話し合った。正直に言うと、和真をずっと閉じこめておきたいって思ってる。だけど、和真の意志も尊重したい。だから、外に出たいならそう言ってくれていいし、なにかやりたいことがあったら、昨日みたいに言って欲しい。できそう?」  薫の言葉に「努力……します」と答えると、「ありがとう」の声がしたあと背後から体を緩く抱かれた。 「で、セーフワードっていうのは、和真を守るために考えた。今はオーラルセックスしかしてないけど、和真が許してくれるなら、それ以上のこともしたい。今までは俺たちが好きなようにやってきたけど、受け入れてくれるなら、ちゃんとルールを決めておきたい」  正面へと移動してきた奈津の説明を聞いていると、薫の手のひらが下腹部へと触れてくる。布越しに感じたぬくもりに……そんなつもりなど無い筈なのに、下肢がじわりと熱を帯びてきた。 「セーフワードは、和真が止めて欲しい時に使う言葉だ。それを言えば、俺たちは止まる。それなら和真も安心できるんじゃないかな」  奈津が、ひとつひとつの言葉を選んで話しているのが分かるから、内容を理解しようと必死に和真は耳を傾ける。頭が上手く働かなくて、イメージはあまり浮かばないが、彼らが変わろうとしていることは、表情からも伝わってきた。   「で、葡萄でいい? 声が出なかったら、手のひらでグーとパーを繰り返す。どうかな?」 「ぶ……葡萄?」  薫からされた提案が、思いもよらない言葉だったから、思わず声が出てしまう。 「そう。嫌だとか()めてとか言われても、和真が悦さそうなら()まれない可能性がある。だから、全然関係ない言葉を選んでみたんだけど……ダメ?」  理由を話す奈津の表情に、ふざけている様子はないから、自分のために2人が真面目に話し合って決めたのだ……と、和真はようやく理解した。 「ダメではない……です。頑張ります」  これまで、徹底して全ての行為を受け入れるように教え込まれた和真だから、どのタイミングでセーフワードを使えばいいのか分からない。けれど、自分のことを尊重しようと2人が考えてくれた事実は、和真の心にわだかまっていた漠然とした不安を溶かした。 「ありが……とう」  無意識のうちに紡いだ言葉が途中で詰まり、代わりに嗚咽が漏れてしまう。悲しいわけでは無いのだが、制御できない涙が頬を伝い落ちた。 「……うれしい」  2人を心配させないように、必死に言葉を繋げると、息を飲むような気配がしたあと、「泣くな」と薫が優しく囁く。そして――。 「我が儘、言っていいよ。なんでも聞くから。和真はどうしたい?」  目尻を優しく拭った奈津に、蕩けるような甘い声音で問われた時、和真の中には答える言葉が一つしか残っていなかった。 「俺は……最後まで、抱いて欲し……んぅっ」  発した声は、途中で奈津からのキスに遮られ、最後まで言わせてもらえない。角度を変え、口腔内へと入り込んできた舌先に、上顎をねっとり舐め上げられて、背筋を愉悦が這い上がった。同時に薫の手のひらが、パジャマのズボンを下へとずらし、下腹部へ圧をかけてくる。 「和真、ここが一杯になるの……想像して」 「っふ、うぅっ……」  薫の声に煽られた体が内側から熱を持ち、直接触れられたわけでも無いのに、後孔がズクリと蠢いた。 「勃ってきた」 「ううっ……んっ」  僅かに形を変えた性器を下着の上から軽く握られ、和真は腰を引こうとしたが、許さないと言わんばかりに、奈津が両膝を左右に広げる。 「腹とキスだけでイけるかな?」 「んっ……うぅっ……ん」  薫が何を言っているのかを理解することができなかった。ただ、達したいという欲望に駆られ、和真は必死に手を動かして下着の中へと入れようとする。と、「ダメだよ」の声が聞こえて両方の手首を掴まれた。

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