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「うっ、うぅっ!」
上顎 から喉の奥を擦られるたび、苦しいけれど気持ちが悦くて和真の体は跳ね上がる。同時に後孔を激しく穿たれ、自分の体が常に達しているかのような恍惚感に飲み込まれた。
「んぅ……ぐぅ」
(きもちいい……きもちい……)
ぐちゅぐちゅという卑猥な音が、途切れること無く鼓膜を震わせる。行為自体は以前と変わらず激しいもののはずなのに、彼らの言葉を信じたせいか? 恐怖を感じることは無かった。
「ここ、気持ちいいよな」
喉のあたりを指で押しながら薫が尋ねてくるけれど、返事ができる訳もないから和真は腕を上へと伸ばす。すると、手のひらをそっと包まれたから、返事の代わりにその手をギュッと握りしめた。
(伝われば……いい)
「かわいい」
聞こえてくるのは奈津の声。同時に後孔を穿つスピードが速くなり、咥えている薫の性器が奥へと入り込んでくる。
「んぅ……ヴゥッ!」
「やば、搾り取られる」
唸るような低めの声と、荒くなった息づかい。
「和真、少し我慢な」
「うぅっ……うぅ――っ!」
(くるしいっ……くるしっ)
同時に頭を固定され、何度か激しく穿たれたのち、なま暖かい液体が、食道の奥を満たしていく。
「俺も」と呟く奈津の声をどこか遠くに聞きながら、和真は意識を落とそうとするがそれは許してもらえなかった。
「んっ……ぐんぅっ」
乳首を彩るピアスを引かれ、そこから生まれた痛みと愉悦で現実へと引き戻される。
「俺たちを全部受け入れて」
艶のある奈津の掠れ声。内側から臍のあたりを圧迫してくる彼の切っ先が、いつもは入らない奥深くへと進入してこようとしている。
(こわい……苦しい……)
「うっ……うぅっ……ぐんぅ」
口腔内に溜まった精液を必死に嚥下していると、暫しして、ズルリと性器が引き抜かれた。上顎が擦れる愉悦で和真は再び軽く達したが、本人はそれに気づけない。
開口具が外された途端、激しく咳き込んだ和真の体は薫の腕に支えられ、クッションを取り払われた後に背中からふわりと抱きしめられた。
「あっ、あぁっ」
「飲んでくれて、ありがとう」
咳がようやく収まった時、小さく耳元で囁かれ……和真の心で張りつめていた緊張の糸がプツリと切れた。
「おなか、おなか、苦しい……奈津、薫……たすけ……て」
「うん、苦しいよな。どうする? 抜いて欲しい?」
奈津が僅かに腰を引き、涙を流す和真の目尻を舌で舐めとる。
「嫌だったらセーフワード、言って」
薫に耳朶を甘噛され、和真が「いわない」と答えた瞬間、奈津が動きを再開した。奥へと進入した先端から、無意識のうちに逃れようとした体は薫に押さえられ、気が狂いそうな快楽の波が次から次へと押し寄せてくる。
「いっ、あっ……あうぅっ、ふかい、こわい……」
「でも、ここは気持ち悦いだろ?」
薫の手のひらに下腹部を緩く圧迫され、ドライで達してしまった和真は、「きもちいい」を繰り返すけれど、焦点がうまく定まらず、呂律も回っていなかった。
「やばい、中……締まる」
切羽詰まったように紡がれる低い声。刹那、腹の中へと注がれた熱に、これまで感じたことの無いような愉悦が背筋を突き抜けた。
「いっ! いく……いくっ……あっ……あぁっ」
目の前が白い色に染まり、自分の意志とは関係なしにつま先が何度か宙を蹴る。
「上手にイケた」
「あっ……あ」
射精の余韻に呆 けていると、萎えかけている和真の性器を緩く掴んだ奈津に褒められ、心の底からわき出したのは喜びに近い感情だった。
「奈津、薫、あいして……ずっと……んぅ」
スルリと零れた和真の本音は奈津の唇で塞がれたけれど、気持ちは2人に伝わったようで、「愛してる」という薫の声が心を優しく揺さぶった。
(きっと、俺はおかしくなったんだ。でも、それでも……)
愛してる。
愛して欲しい。
たとえ形が歪 でも……2人によって注がれる愛ならその全てを受け容れたい。
徐々に薄れる意識の中、久方 ぶりの激しいセックスで疲弊しきってしまった体とは裏腹に、和真の心はこれまでに無い幸福感に包まれていた。
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