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梓の丸カラオケ強制大トリ決定事件簿

雨花様の脱獄祝いでのことです。 あ……脱獄とか言ったら、また九位(ここのい)様にドヤドヤ言われそう。 えっと……雨花様の、地下牢からの釈放祝いのことです。 釈放されていらっしゃった時、玄関で俺、『おかえりなさいやし!』って、出迎えたんです。そしたら雨花様が『やつみさん、それ、出所してきた親分を迎えるようなノリですね』って、大笑いしてくださって。みんなでそこでひとしきり笑ったわけなんですが……。そんな雨花様の出所を……あ、地下牢からの解放?を祝って、いつものごとくパリピの四位(しい)さんが、何かお祝いをしようと企画を始めたんです。 それが内容を聞いたら、何故か大部分がただのカラオケ大会で……。 いや、ただ単に四位さんが、カラオケ好きだからでしょ?と、思ったんですけど。 雨花様のご実家の連続襲撃事件の時は、あの四位さんが、ずっとカラオケすら自粛してたそうで。いや、どんだけカラオケ好きなんすか。 若様と雨花様がうまくいって、地下牢から釈放されて、もう何も心配することがないだろうって、梓の丸全体が開放感バリバリでしたから。 久しぶりにカラオケしたかっただけなんじゃないっすかね、四位さん。 そんなこんなで、釈放祝いに、まずはみんなで雨花様に歌を捧げます!なんていう名目の、ほぼほぼ、梓の丸カラオケ大会が催されることになったんです。 梓の丸の使用人と一緒に、カラオケをすることって、結構あるんですよ。なんてったって、パリピの親分四位さんが、カラオケ大好きですから。しかも、曲輪の中の娯楽施設として、カラオケボックスがあるんです。 俺なんて、よく無理矢理連れられて行くんですけど……好きっていうだけあって、四位さんはめちゃくちゃうまいんですよ、歌。振り付けまで完璧で。だから無理矢理連れて行かれても、別にイヤってほどじゃないんですけどね。面白いんで。行っちゃえば。 梓の丸の他の側仕えさんとは、全員とご一緒したことがあります、カラオケ。その中でも、一番最高なのが五位(いつみ)さんですね。もう五位さんは、一緒にカラオケ行きたい人、ナンバーワンですよ。 一位様とは一回だけだったかなぁ、ご一緒したの。ホントにちょっとですぐ帰られたんで、一位様の歌は聞いたことないっすね。でも二位(ふたみ)さんは上手いですよ?三位(さんみ)さんも。 六位(むつみ)さんは、ほんっと選曲がめちゃくちゃチャラくて、ノリがヴィジュアル系バンドみたいなんですけど、決して下手ではないです。 七位(ななみ)さんは、なんか音楽やってるってことで、歌もうまかったなぁ。なんの音楽をやってるのか聞かなかったですけど。それこそ、七位さんのほうが、見た目だけならヴィジュアル系バンドやってます!みたいな人なんで、そっち系かもしれないですね。 九位様の歌も、聞いたことないかも。その場にはいても、九位様はずーっとたばこ吸ってるんで。そんなんだから、きっと歌声もガラッガラじゃないですかね。俺を怒鳴る時も、ちょいちょいガラガラ声ですし。 で! 五位さんですよ。もう五位さん、本当にサイコーなんです。一言で言ったら、ドラえ○んのジャ○アンっすね。五位さん、見た目もゴリマッチョで、ジ○イアンの上位互換みたいな人ですけど、もう、歌に関しては、本当にジャ○アンなんです。ジャイ○ンのモデルが五位さんなんじゃないか疑惑が、俺の中で発生中ですよ。 漫画でジャイ○ンが歌う場面に『ホゲ~』みたいな擬音がついてますけど、五位さんの歌も、たいがいあんな感じです。 カラオケに行くと、四位さんが必ず、”オレはジャイ○ン様だ”っていう歌を入れるんですけど、絶対に五位さんが歌うことになるんです。五位さん、なぜかあの歌だけは、どんどんうまくなってるのがまた最高なんですよ。 五位さんもその歌が流れると『私の出番だな』なんて、意気揚々と歌いだすもんだから、もう本当に最高で。いつもは馬鹿真面目で侍で、曲がったことが大嫌いな五位さんなんですけど、カラオケの五位さんは、ホント最高に面白いんです。 そんなこんなで始まった、雨花様釈放祝いパーティ?でのことです。 一位様と二位様は、事前に歌わないということになっていたようで、三位さんから歌いだしました。 お料理の準備があるし……なんて理由で、歌うことを免除された二位様が、三位さんが歌い始めた途端に会場にやって来て、嬉しそうに見ていたのが印象的でした。三位さんを見る時間はあるんじゃん!って。 次に歌った四位さんは、そりゃあもう完璧な振り付けで、アイドルの歌を歌ったんですけど、雨花様は大喜びでした。 で!順番ですと、次に五位さんなんですけど、そこは四位さん、五位さんに恥をかかせちゃいけないと思ったのか、次は六位ですって、言ったんです。 そしたら五位さんが、自分の番だって言い出して。五位さん、歌うのは好きなんですよ、きっと。 いやもう、五位さんが歌いだす前から、側仕えは全員ソワソワしだしましたよね。若様もいらっしゃるのに、五位さんの歌なんか披露しちゃっていいのかよって意味のソワソワです。 五位さんが歌ったのは流行りの歌だったんですが、いつの間に練習したのか、そこまでホゲーってなかったんです! 五位さんが歌い終わったあとに、みんなが必要以上に盛り上がっているもんで、雨花様が『いつみさん、すごい盛り上げますね』なんておっしゃって。 俺がつい『いや五位さん、いつもはすっごい驚くほどの音痴なんです』って言ったら、『音痴?え?全然うまかったですよ?皇の鼻歌のほうがよっぽどひどいから』なんてことを言い出したんです。 それを聞いて、俺たちホントびっくりですよ。 あの若様が!鼻歌を歌う?!そんでもってそれがなんと、五位さん以上の音痴だって言うじゃないですか! 学校の音楽の授業の時は、そりゃあ若様だって歌うことはあるでしょうけど……あの若様が鼻歌ですよ?! いったい何を歌うっていうんですか?音楽をたしなむ……というイメージすらないんですけど。 若様は『鼻歌なぞ歌わぬ』と、顔をしかめたのですが、雨花様は『歌ってた!おふ……あ、いや、絶対歌ってた!オレ聞いたもん』と、譲りません。 今、雨花様が言いかけた言葉は、お風呂……ですよね?口の動きがそうでした。 きっと、お二人でご一緒にお風呂に入られた時に、若様が鼻歌をお歌いになっていらしたってことなんじゃないですかね。 いくら雨花様とご一緒にお風呂に入って浮かれていたとしても、若様は鼻歌を歌うような方には見えないのですが……。 『余が何を歌っていたと申す』と、若様が不機嫌にそう聞くと、雨花様は『何を歌ってるのかわかんないくらいひどかったんだって』と、吹き出しました。 『そなたの知らぬ歌だったのであろう』と、若様がさらにおっしゃると『じゃあお前、歌ってみてよ』と、雨花様が大変な無茶ぶりをなさいました。 強っ! こんな無茶振りを若様に出来るのなんか、雨花様しかいませんよ。ホント強っ! 若様は『そなたが先に歌ってみせよ』と、雨花様を睨みました。 雨花様は『言っておくけどオレ、ウィーン少年合唱団に入らないかって言われたこともあるんだから。オレが歌ったら、お前も絶対歌えよ』と、冗談なんだか本当なんだかわからないことを言いながら、カラオケの選曲をするための歌本を、四位さんから受け取りました。 いや、生まれてこのかた、海外生活のほうが長いなんていう雨花様のことだから、本当にそんなことがあったかもしれない……なんて思いながら、雨花様の選曲を待ちました。 「これから歌う人と、絶対被らない歌がいいですよね」 なんて、俺たちのことを気遣ってくださりながら、雨花様が選んだ曲は『神猛学院高等部校歌』でした。 ……え?校歌がカラオケに入ってるの?驚きです! しっかし、雨花様……いくらあとから歌う人とかぶらない歌をって言っても、校歌って……。いや、校歌って……ねぇ? 四位さんが操作をすると、すぐに『神猛学院高等部校歌』のイントロが流れ始めました。 俺たち、梓の丸の家臣たちは、この歌を覚えさせられているので知っています。雨花様が神猛に編入なさる時、俺らも校歌を知っていたほうがいいだろうと、一位様に覚えさせられたんですよ。 大きく息を吸った雨花様が、校歌を歌いだしました。 こんなに感動する校歌、初めて聞きました、俺。 校歌をこんな感動的に歌い上げる人って、いるんすね。いや、ウィーン少年合唱団話、冗談じゃないかも。 いやぁ、本当に雨花様の歌声は、すごく魅力的で……。その場にいた俺たちは、しばし聞き入って、歌い終わったあとも、ボウっとしてしまったくらいです。 『そなたの引き出しの多さには、誠、関心する』と、雨花様の手を引いた若様を見て、俺たちは我に返り、ようやく雨花様に称賛の拍手を送れたくらいです。 『はい、次、お前の番』と、雨花様が若様の肩に、頭をちょんっと乗せると、若様は『やめておこう。そなたの歌声を忘れたくないゆえ』と、若様の肩に乗せられた雨花様の頭に頬をつけました。 ……エロっ!なんか若様、本当に最近、何をしててもエロス神なんですけど。 そう言われた雨花様は『まぁいいけど』なんて言って、顔を赤くなさっていらっしゃいました。 さて……こうなると、次に歌う順番を迎える人は、大変歌いづらいです! このあとは、順番的にいって六位さんですけど、六位さんを見ると、四位さんに向けて、腕で大きくバツの字を作っていました。 うん、ですよね。もし俺が次に歌う番だったとしても、歌えませんって。 ってことで、カラオケ大会は、そこで強制終了され、四位さんの似顔絵大会になっていき、何もしていない俺は、何か一発芸でもしろという話になり、九位様のモノマネをして会場を爆笑の渦にしたんですが、パーティあとで九位様に相当絞られたっていう……理不尽~! そんなこんなで、結果的にはものすんごく楽しい、雨花様地下牢解放パーティでした。 そうそう、四位さんが描いた若様と雨花様の似顔絵が、もうホントものすんごいうまくって!感動した雨花様は、四位さんがサラッと描いたその似顔絵を、額に入れてお部屋に飾ってるんです。 今度俺も、描いてもらいたいなぁ。 この先、雨花様の合格祝いパーティや、卒業祝いパーティ、入学祝いパーティなどの企画が出ています。 梓の丸の使用人たち、基本パーティ好きなんでしょうね。 雨花様も楽しそうに参加してくださいますし……。 でも、今回の件で、この先パーティでカラオケをすることがあっても、五位さんと雨花様のどちらかを必ず大トリにすること!という決まりが作られました。 だってそうしないと、その二人のあとじゃあ、多分誰も歌えなくなるでしょうから。 あのあと五位さんに、歌がうまくなったじゃないですかって言ったら、このカラオケ大会のために、こっそりボイストレーニングに通い始めたって言ってました。 これからも通い続けるらしいです。 えー……もったいないなぁ。五位さんの魅力は、あのボエー感なのに。 歌がうまくなっちゃったら、五位さんなんて、ただのゴリマッチョのイケメンじゃないですか。 キャラ付けは大事だと思うんだけどなぁ。 まぁでも……梓の丸は、雨花様が大学合格してくだされば、楽しい行事がもりだくさん続きそうです! いや、絶対、東都大に合格なさると思いますけどね。俺は、雨花様と同じ大学に通えないのは、ちょっと寂しいですけどね……。 今日も四位さんに呼ばれて、パーティの実行委員会の会議があるんです。四位さんが仕切るパーティでは何が一番重要かって、若様と雨花様のいちゃこらっぷりをどれだけ見られるかってことなんですよ。 それがわからないやつは、四位さんの仕切るパーティの実行員会には参加すら出来ない決まりです。 俺もこれは気合いを入れて、お二人がいちゃこら出来る企画を考えねば!俺、その点では四位さんに、どこまでもついていきますからね! 「八位!どこだ?!」 あ……九位様が呼んでる! 「はーい!八位、ここでーす!」 俺は、お二人がいちゃこら出来るイベントを考えながら、九位様のもとへと走った。 fin.

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