「皇の浮気者っ！オレ……実家に帰らせていただきますっ！」 「雨花っ！」 あああああああああ……。 本当に僕は、どうしてこう、巻き込まれ体質なんだよ！ なんでこんな時に、若の部屋に来ちゃったんだ！僕の馬鹿っ！ 若に見つからないよう、こっそり部屋から出ようと思った時、『詠！』と、声を掛けられた。 見つかってたぁ！ 「雨花を追う！」 いやいや、僕にそんな報告なさっていないで、早いとこ雨花ちゃんを追いかけないと。 「はい！いってらっしゃいませ！お急ぎにならないと……」 「お前も参れ」 「はぁ？！」 「早う！」 何故、僕がご一緒に？しかし、反論出来そうな雰囲気など微塵もなく……。 こうして僕は、若と一緒に、雨花ちゃんの実家……柴牧家に向かうことになったのだった。 ホント、なんでー？！ 柴牧家に向かう道すがら、どうしてこんなことになったのか、若に話を聞いた。 僕が若の部屋についた時、雨花ちゃんの、『実家に帰らせていただきます！』って声が聞こえて飛び出していったわけで、何があったのか、僕にはさっぱりわからない。 若と雨花ちゃんは、ちょいちょい喧嘩をすることもあるけど、基本、僕から見たらただのバカップルだ。 実家に帰らせていただきます！なんて、こんな喧嘩は、今まで見たことがない。 若の話の要点をまとめると、こんなことだった。 事の発端は、若のベッドの下にあった。 いつぞや若は、雨花ちゃんの部屋のベッド下を覗き込んでいたことがあったらしく、話の流れで、先程急に、雨花ちゃんがそれを思い出したらしい。なんであの時、ベッド下を覗いていたのかと、その理由を聞かれた。 若が雨花ちゃんのベッド下を覗いていたのは、柴牧家連続襲撃事件の狼煙を上げた、雨花ちゃんのカバンにおかしな手紙が入れられた日のことだったという。 若は、雨花ちゃんのベッド下あたりに、盗聴器や何か不審な物はないか確認のために、雨花ちゃんのベッド下を見ていたという。 でもその当時はまだ、雨花ちゃんは事件が始まったことにすら気付いていなかったため、若は雨花ちゃんに、ベッド下を覗いていた理由を、その時には説明しなかったのだそうだ。そんなことを言ったら、雨花ちゃんを不安にさせると思ったからと……。 でももう事件は解決したわけだし、何故あの時ベッド下を覗いていたか、雨花ちゃんに真実を話そうと若が口を開く前に、雨花ちゃんが『あ！わかった！なんか変なもんでも置いてあると思ったんだろ？残念でした！何もなかったろ？そういうお前のベッドの下には……』なんて言いながら、若のベッド下を覗き込んだ。 「で。何もないと思って覗き込んだ若のベッド下で、雨花ちゃんはおかしな物を見つけてしまったと、そういうことですか」 「処分するのを、すっかり忘れておったのだ」 若の話では、絶賛ＥＤ中だった頃、若の夜伽の師である蔵路先生から、毎夜見るようにと、山程のエロ本を贈られたそうで。 すぐに見やすい場所……ベッド下に置いておくこと！と、指示が出されていたという。 若も本丸の使用人もみんな、その言いつけを守って、ずーーーっと若のベッド下には、エロ本が置いてあったという。 その大量のエロ本を、雨花ちゃんに発見されてしまったと……。 「しかし、雨花ちゃんも若がエロ本見たくらいで浮気って……」 「見ておらぬ！」 「え？」 「そのようなもの、余は見ておらぬ！」 「え？」 若は、蔵路先生からいただいたエロ本を、見る気も起きなかったという。ちゃんと見ているかのチェックもされなかったため、ただただベッド下に積み上げられたままだった蔵路先生のエロ本は、今日初めて雨花ちゃんの手によって、日の目を見たということだ。 「雨花ちゃんに中身見られたんですか？」 「中身を見たゆえ、激昂したのであろうが」 「ちなみにどんな内容だったんですか？」 「余は見ておらぬ！内容なぞ知るものか！」 見ていないという、若の言葉は真実だ。 「雨花以外の者なぞ見たところで、余が昂るわけなかろう！」 「いや、それは知りませんけど。雨花ちゃんに会ったら、見てもいないって、ちゃんと説明してくださいよ？」 「説明の余地すらなかった！余が浮気をしたなどと言いおって！余の話は聞く耳すら持たぬ。お前がおれば、雨花も少しは話を聞くであろう」 「はあ」 そんな理由で僕は今、イライラMAXの若と、柴牧家に向かっているのか。とばっちり甚だしいんですけどー！ 柴牧家で修羅場なのかなぁ……柴牧家様も困るでしょうに。 そんなことを思っている間に、車は柴牧家に着いた。 初めて来たけど、雨花ちゃんち……デカっ！ 若は車を降りると、慣れた様子で、雨花ちゃんの家の門をくぐって、中に入っていった。 インターホンを押すとすぐに『はーい！』という女性の声が聞こえてきた。 「皇です」 『え？！若様？！』 そう言ったまま、しばらく何も聞こえなくなったインターホンを見つめていると、急にドアがガラっ！と開いた。 雨花ちゃんちの玄関は、横開きのドアで……って、そんなことはどうでもいいか。 中から、どこか雨花ちゃんに似た女性が『若様！どうなさったんですか？』と、目を丸くしながら出てきた。 多分このかたは、雨花ちゃんのお母さんだろう。 「雨花を迎えに参りました。お騒がせをして、申し訳ありません」 若も、雨花ちゃんの家族には、こんな風に丁寧なんだな。家臣とはいえ、雨花ちゃんのお母さんは、若のお義母さんになるわけだしな。 「え？あっくん？を？迎えに？」 「はい。こちらに来ては……」 「いえ、おりませんけど。え？こちらに来る予定でしたっけ？」 そう聞いて若は、顔色を変えた。 「失礼しました。また、雨花と共に参ります」 そう言った若は、急いで車に戻り、どこかに電話をかけた。 「雨花を探せ！」 それだけ言って電話を切ると、『曲輪へ』とだけ言って、ドカッと座席に座り直し腕を組んだ。 僕は念の為、正門の門番に連絡をして、雨花ちゃんが外に出たか確認をした。 雨花ちゃんは正門を通っていないという。 「正門を通っていないんじゃ、曲輪の中にいらっしゃるのでは？実家に帰らせていただきますって、梓の丸の屋敷のことなんじゃないですか？」 そう言うと、若は何の返事もせずに、またどこかに電話をかけた。 「雨花はいるか」 どうやら、梓の一位様に電話をしたらしい。 いないという返事だったのか、若は『わかった』と言って、すぐに電話を切った。 電話を切ってすぐ、若の電話の着信音が鳴った。若は電話を取ると『わかった』と返事をしてすぐ電話を切り、『三の丸へ急げ！』と、運転手に命令した。 「雨花ちゃん、三の丸、に、いらっしゃるのですか？」 「そうらしい」 『実家に帰らせてもらいます！』って、若の実家かよ！ ああ……何か、ジブ○映画の主題歌で、そんな歌あったなぁ。 明日の朝、ママから電話で、叱ってもらうわ、マイダーリン……だっけ？ これから三の丸に向かうってことは、若は、明日の朝電話で叱られるどころか、今から三の丸で、御台様にどんな目に遭わされることか……。 御台様は雨花ちゃんを大層可愛がっているからなぁ。 うーん、これは……。 一度ぜひ見せていただきたいと思っていた、拷問術の達人と名高い御台様の拷問を、目の前で見せていただけるチャンスなのでは？ 若には申し訳ないですが……いやいや、若は自業自得だからいいか。 心なしか顔色が悪くなる若の隣で、僕はちょっと心を弾ませた。 御台様の拷問術が見られる！なんて浮かれてたけど、それよりも、雨花ちゃんがこんなことで、若の奥方様にならないなんて言い始めたら、僕が困るのを忘れてた！ 僕は、若の無実を証明するため、三の丸に向かう若と正門で一旦別れ、一人で本丸の若の部屋に戻り、”証拠”を持ち出したのち、三の丸へと急いだ。 「どの面下げて来やがった！そこへ直れ！千代！」 僕が三の丸に着くと、すでに三の丸の玄関で、御台様が仁王立ちして叫んでいらした。 「雨花はここにいるのですか」 「青葉は泣きつかれて、奥で寝てる！お前に浮気されたって言ってな！あんなかわいい青葉がいるのに浮気するとは何事だ！この腐れ外道が！そこに膝ついて歯ぁ食いしばれ！お前の根性、叩き直してやる！」 「誤解です！」 「一位！也之(なりゆき)を持て！」 也之とは、鎧鏡家お抱えの刀匠……日本刀職人である佐々先生の打った名刀の名前……だったかと。 っていうか！若への御台様からの罵詈雑言の数々！これは……見られるかもしれない！御台様の拷問術！ 雨花ちゃんが嫁にならないなんてことにはさせないけど、御台様の拷問を見てから若を助けても遅くないか？ そんなことを思っていると、三の丸の一位様が、大きな日本刀を持っていらっしゃり……って、本当に持って来てるし！ 御台様は、也之をすらりと鞘から抜くと、若にビシッと刃先を向けた。 「何が鎧鏡一族の血を引く者は一途だ！聞いて呆れるわ！お前の親として本当に情けない！その腐れチンコ、私がスッパリ切り落としてやる！」 もうそのイメージだけで、股間がギュン！です！御台様！ あ、いえいえ！そんなことを言っている場合じゃない！なんとかしないと、若の"すめらぎくん"が、本体から切り離される！だって御台様の顔……本気だ！ すめらぎくんが切り離されたら、若はもとより、雨花ちゃんだって困ります！御台様！ これは、拷問見たあとで止めればいいやなんて言ってる場合じゃない！早く御台様をお止めしないと！ ……っていうか、そもそも雨花ちゃんの最恐ストーカー、完全体のキティラーである若が、浮気なんかするはずないですって。 「お待ちください！御台様！」 「ふっきー……千代を庇おうとするなら、千代と同罪とみなすぞ」 御台様はあの新年会後、何故か僕を、”ふっきー”と、お呼びなんですが……。 まぁそれはいいとして、僕の股間まで也之の餌食になるかもしれない危機！ 僕は急いで、抱えていた”証拠”を、バンッ！と、御台様の前に置いた。 「これは？」 「若が浮気なんて、絶対にありえません！雨花様の誤解なんです！」 僕は、雨花ちゃんが若の浮気を疑った原因について、御台様に詳しくご説明申し上げた。 僕の話を聞いた御台様は、雨花ちゃんが泣きながら、御台様に訴えた内容を話してくれた。 雨花ちゃんは、若のベッドの下に、いやらしい本がたくさんあったのを見つけてしまったと。そんな本を見ているということは、不能だった若のすめらぎくんは、今や雨花ちゃん以外でも、勃ち上がることが可能になった証拠だと。そんな本を見ていること自体、頭の中で自分以外と浮気していることじゃないか！と、そう言って泣き続けて、疲れて眠ってしまったという。 「見てください！御台様！」 僕は、御台様の前に置いた、若が浮気をしていないという証拠のエロ本を一冊手に取った。 「全く、めくられた痕跡がございません！」 差し出したエロ本を手に取られた御台様は『確かに……』と、おっしゃった。 「そして！何より若が、これらを見ていない証拠として……」 僕は、また一冊のエロ本を手に取ると、その本の真ん中あたりを開いた。 「見てください！袋とじが、閉じられたままです！」 「おお！」 そう驚きの声を上げたのは、いつの間にか、御台様の後ろに立っておられたお館様だった。 「これをすーが見ていたとしたら、まず袋とじは開けるだろう？ねぇ？」 お館様が御台様にそうおっしゃると、御台様は『確かに……』と、おっしゃった。 「私は本当に、こんなもの見ておりません！」 若はそう言って、このエロ本は、蔵路先生から配布された夜伽教材で、しかし開く気もなかったので一度も開いていない、疑うのなら指紋鑑定でもなんでもしてくれと、訴えた。 その時、奥のほうから『ホント？』と、雨花ちゃんがひょっこり顔をのぞかせた。 「雨花！真だ！よう見よ！」 雨花ちゃんはノソノソと近くにやって来て、エロ本を確認した。 「……ホントだ」 「そうであろう！早とちりしおって！」 「青葉を責める前に反省しろっ！お前が青葉に誤解させたんだろうがっ！そんな物、置きっぱなしにしておくなんて！」 御台様はそうおっしゃって、三の丸の一位様に『処分して。全部』と、エロ本を指した。 お館様は、御台様のお隣で『いやぁ、蔵路先生は仕事熱心だからねぇ』なんて言いながら、顎を触りつつ笑っていらっしゃる。 「見てもおりませんでしたので、存在自体を忘れておりました。本丸の部屋にまだあるかもしれません。それも全て処分させます」 若様がブスッとした顔でそうおっしゃると、『なんか……何にも書いてないパッケージのＤＶＤみたいなのが、ベッドサイドに置いてあった。あれは？』と、雨花ちゃんが言い始めた。 おお！なんていいタイミング！それは、若が浮気をしていないという証拠として、ちゃんと持って来てますよ！雨花ちゃん！ 「それは、これですね！」 僕はバーンっと、雨花ちゃんの前にブルーレイディスクを出した。 若の部屋に、エロ本を取りに行った時、このブルーレイディスクが目に留まった僕は、何も書いていないパッケージを不審に思い中を確認したところ、これは若が浮気をしていない証拠になるだろうと、一緒に持って来ておいたのだ。 それを取り出すと、何故か若がうろたえ始めて、『それはならぬ！』と、僕の手から、ブルーレイディスクを取り上げようとした。 「やっぱりおかしなＤＶＤなんじゃん！」 あ、雨花ちゃん、これ、ブルーレイです。 そんなツッコミをする雰囲気ではない雨花ちゃんがまた涙目になると、御台様が『本は見てないがＤＶＤは見ていたなんてことじゃないだろうな！』と、僕の手から、ブルーレイディスクを取り上げた。 「見てください！中身を！」 何も書いていない不透明なパッケージを開くと、中のブルーレイディスクには、『ばっつんメモリアル～藤咲桜恵全力編集版～』と、書かれている。 「……ばっつ……え？サクラ？」 タイトルを見た雨花ちゃんは『なにこれ！』と、一気に顔を真っ赤にした。 若は大きくため息を吐いて『題名通りだ』と、ガックリ肩を落とした。 御台様は、『あ？ばっつんって、青葉のことだよね？』と、おっしゃると、雨花ちゃんはコクリと頷いて、『こんなこと書いてあるけど、中身は違うとかじゃないよね？』と、恨めしそうに若を見上げた。 いやいや、ないですって。若はホントにキティラーですから。雨花ちゃん一筋ですって。 ここは僕も一緒に、若の無実を証明していかなければ！僕が若の嫁になる危機は、なんとしても回避する！ 「それはないです！若は本当に雨花ちゃん一筋です！」 それはもう、気持ち悪いくらいに。 「この中身は、雨花ちゃん映像に違いないです！」 ええもう、多分気持ち悪い位に雨花ちゃんだけかと。 「大老候補の権利を賭けてもいいです！中身は雨花ちゃん映像です！」 「よう申した！」 若がそうおっしゃると、御台様は『そこまでふっきーが庇うのは怪しい』と、おっしゃって……。 うわぁ、僕の必死さ、逆効果ぁ。 そんなこんなで、若の無実を証明すべく、急遽、三の丸のリビングで、”ばっつんメモリアル”なるブルーレイを、みんなで観ることになったっていう……。 「……」 若は最後まで、『やめてください！本当に雨花の映像しか入っておりません！』と、御台様に訴えていたけど……そんなの聞き入れる御台様ではないからね。 若の訴えむなしく、無情にもブルーレイがセットされると、若は画面の前で手を広げて、『本当にみないでください！』と言い、テレビを壊す勢いだったけど、そんな若を御台様は、どこぞから出してきた手錠で拘束し、口をガムテープで塞いだ。 御台様の手際が良過ぎる！ こうして、ウーウー言っている若様をしりめに、ブルーレイは再生されたのだった。 ガヤガヤという音声と共に映ったのは、制服姿の雨花ちゃんで……。ここがどこかと思ったら、どうやら神猛のプールの更衣室のようだ。 雨花ちゃんは、片側にゴムの入っているラップタオルで胸まですっぽり体を覆って、うまいこと水着に着替えていく。 っていうか……サクラぁ……もう完全にこれ盗撮じゃん！ 雨花ちゃんの周りは、全部モザイクがかかってるけど、雨花ちゃんと話しているのは、シルエットからして全裸のかにちゃん……だろ？多分。 映像が流れてすぐ雨花ちゃんは、『何これ！いつの間に撮ってたの？！』と、真っ赤な顔をして、『もうわかったので、とめてください！』と、御台様に言ったけど、御台様は『いやいや、最初はこれでも、そのうち違う映像になるかもしれないし』とおっしゃって、停めようとはなさらない。 しかし、そのあとも、主に学校での雨花ちゃんの着替え映像やら、学祭でのダンス映像、お昼ごはんを食べている映像などなど……普通に見ている分には、単なる雨花ちゃんの学校生活の映像でしかなく……。 まぁ時折、雨花ちゃんの腹チラや口のアップ、胸元のアップなどなど……女の子のアイドルの動画風な作りになっているようだけど……しょせん雨花ちゃんだし。 しっかしこれは、キティラーの若にとったら、そこらへんのアイドル動画なんかより、ずっとクるものがあるんだろうなぁ。 「本当に青葉しか映っていなかったね」 雨花ちゃんは、もう途中から自分で顔を覆って、映像を観てはいなかったので、私が『はい！おわかりいただけましたでしょうか』と、代わりに返事をしておいた。 「ごめん、皇……」 雨花ちゃんは、フゴフゴ言っている若の口に貼られたガムテープを、そっと剥がした。 「だから誤解だと申したに！」 「だって……あんなにたくさん、あんな本が出てきたら、驚くに決まってんじゃん！オレにしか……そんな風に思わないなんて言ったくせに、本当は、こんな本見ながら……してんのかなって思ったら……オレ……」 手錠で拘束されたままの若と雨花ちゃんが見つめ合うと、御台様が『良かった良かった。でももう青葉を不安にさせるような真似、するんじゃないぞ！』と、若の手錠を外された。 「それにしたって、もっと早く追いかけて来い！全く！」 御台様がそうおっしゃるので『すぐに追いかけたのです。雨花様が実家に帰らせていただきますとおっしゃって出て行かれましたので、柴牧家様のお宅に伺っておりました』と、僕が返事をすると、『え？！そっか……実家って言ったら、柴牧の家だよね』と、雨花ちゃんがクスッと笑って、『実家に帰らせていただきますで、ここに来たのか』と、御台様が、雨花ちゃんの頭を撫でた。 「とと様、かか様、オレの勘違いで、お騒がせしてごめんなさい」 雨花ちゃんがそう頭を下げると、『なんでもいいよ。いつでもおいで』と、お館様がにっこりなさった。 「青葉は悪くないよ。勘違いさせた千代が悪い！ベッドの下にこんなもん置いておくなんて！蔵路先生に熨斗つけてお返ししてやろう、全く！」 憤慨している御台様と、『蔵路先生は悪くないよ』なんておっしゃっているお館様に一礼して、僕はそっと、三の丸のリビングから外に出た。 「はぁ……」 若が浮気なんて、するわけないって。 若があんなエロ本で勃つわけないんだから。若のすめらぎくんが、あんなエロ本で勃つなら、蔵路先生も大老様も、ご苦労なさっていないだろう。若のすめらぎくんは、雨花ちゃん以外の前じゃ、ふにゃらぎくんで間違いない。ま、雨花ちゃんは、雨花ちゃん以外といる若を知らないんだから、あんな風に疑うのも、わからなくもないけどね。 雨花ちゃんがいない時の若の夜のお供は、さしずめ、あのブルーレイ映像ってところか……。僕が見たって、ただの雨花ちゃんの学校生活映像だけど、若のすめらぎくんには、効果はバツグン……なんだろうなぁ。 「はあ……」 ああ、疲れた。 早く帰って、パソ美三号でもカスタマイズしようっと。 fin.