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不安 ②
『……お前のもんになるわ』
あの日。亜貴が勇気を出して賭けに出た日。俺のもんになって。そんな意味がこもった四つ葉のクローバーの花言葉。小さい頃、洋介にプレゼントしたクローバーに託した気持ち。洋介がそれを受け止めて、亜貴のものになってくれた。
少し息を切らして亜貴の部屋に入ってきた洋介が呟くように言ったセリフ。その時は本当に嬉しかった。その言葉だけで十分だと思った。なのに、自分は貪欲だ。
『好きやで』
亜貴が洋介に伝えても。誤魔化されるようにキスされるか、ありがとう、と言われるか。そんな状態がずっと続けば、洋介の口からはっきりと気持ちを聞きたいと思いたくもなる。けれど、言って、とねだって言われる言葉は嫌なのだ。だって、それは洋介の本心からくるものではないから。
洋介に確かめればいいのかもしれない。だけと、それが怖かった。幼馴染みで、小さい頃からずっと一緒だった。ずっと好きだった。その気持ちを伝えてしまったから。もし、洋介に問い質して自分たちの関係が終わったら。もうきっと元の仲の良い幼馴染みには戻れない。
それはどうしても避けたかった。
「亜貴?」
名前を呼ばれてはっと我に返る。洋介が怪訝な顔をしてこちらを見ていた。テレビ画面ではもうすでに映画が始まっていた。
「どうしたん?」
「いや、なんでもない」
亜貴は軽く笑って、誤魔化すようにテーブルの菓子へと手を伸ばした。
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