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嫌悪感
必死で顔を振って抵抗する。すると、がっ、と太田に頭を両手で掴まれた。
「んぅっ」
無理やり唇を重ねられて、強引に舌が入ってきた。生ぬるい物体が口内を舐め回す。亜貴の中に嫌悪感が広がっていく。それに比例するかのように、目の前の太田の興奮が増していくのが分かった。もう、いつもの太田には見えなかった。
唇が離れたと思ったら、首筋を舐められた。舌が上下にいやらしく動く感触に背筋がぞっとする。
「止めろやっ」
太田の背中を叩くが、手に力が入らないので大した効き目もなかった。太田は亜貴の言葉など完全に無視をして亜貴の首筋を執拗に舐め続けた。
「ちょっ……」
すっとTシャツの中に手が侵入してきた。直に脇腹を撫でられて、あまりの嫌悪感に歯を食いしばる。
『亜貴』
洋介の笑顔が頭の中に浮かんだ。まさか、洋介とする前に好きでもない男とヤることになるなんて思ってもみなかった。自分も悪い。完全に油断していたのだから。
「工藤……」
耳元で荒い息遣いの太田に名前を囁かれ、ぞわっと全身の毛が逆立った。こいつにヤられるなんて嫌だ。それだったらまだ、一生、洋介の傍で我慢している方がましだ。
ダメ元で精一杯の抵抗を見せようと、全身に力を込めた。
すると、先ほどまであった手足の痺れも、だるさもなくなっていることに気づいた。どうやら少ししか摂取しなかったために薬の効き目が早く切れたらしい。
いける。
亜貴は両手で太田の両肩を思いっ切り掴み、両脚を素早く曲げると最大級の力を込めて太田のみぞおち辺りを蹴り上げた。
「うっ」
太田が苦しそうな声を上げて後ろに倒れた。
亜貴は素早く起き上がり靴を掴むと、急いで鍵を開けて振り向きもせずに外へと飛び出した。
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