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亜貴の部屋、洋介と

 長めのシャワーをしてからTシャツと短パンというルームウェアを身に着けて、タオルで髪を擦りながら自室へと向かう。いつものように、何も考えずに自室のドアを開けると。 「……洋介」  洋介がベッドを背に床に座り込んでいた。不機嫌な顔でこちらを睨んでいる。 「……なんでおんの?」 「なんでちゃうわ、ボケ」 「……怒ってるん?」 「当たり前やろ。わけ分からんまま逃げるように去られたら怒るやろ」 「……ごめん」 「……とりあえず、座れや」  そう促されて、ゆっくりと歩いて洋介から少し距離を取って座った。洋介があからさまにムッとしたのが分かった。 「なんでそんな離れて座んねん」 「いや……別に」 「別にちゃうやろ。お前、おかしいで、今日」 「…………」 「なんかあったんやろ?」 「……ないよ」 「嘘つけ。お前、嘘つくの下手なんやから」 「…………」  洋介がはあっ、と溜息をはいた。先ほどとは違い、幾分落ち着いた口調で尋ねてくる。 「なあ……話してくれや。話してくれな、俺もどうしていいか分からへん」 「……どうしようもないことかもしれへんやん」 「……どうしようもなくても、どうにかするよう努力できるかもしれんやろ」 「…………」 「亜貴」  少し強く名前を呼ばれて、これは話すまで絶対に引きさがらへんな、と洋介の性格をよく知る亜貴は思った。ならば、結局のところ話すしかないのだろう。

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