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第48話

 急に素直になってしまった紫月の様子に、氷川の方も満更じゃないのか今までの経緯なんかどうでもいいといった感じで、二人共に欲情の渦に流されていく。男は初めてだと言いながら、所詮ヤることは一緒だとでもいうように、まるで慣れた仕草の愛撫がどんどん淫らに激しさを増してゆく。 「はっ、邪魔くせえったら!」  紫月の太股あたりで絡まっているズボンのせいで思うようにならない動きに、氷川は焦れったそうにそれを掴み上げると、下着ごと一気に引きずり下ろして床へと放り投げた。  全裸に剥かれた肌にダウンライトが容赦なく降り注ぐ。  両脚をグイと開き持ち上げて、 「はは、すっげーカッコ!」  氷川はギラギラとした目つきでいやらしく口元をひん曲げた。  逸った息使いのまま、あられもなくさらされている箇所に指を這わせながら、 「信じらんね、もう湿らせてやがる」  そう言ってクリクリと面白そうにその箇所を弄った。 「……っは……っ……!」 「何? ココがお前のイイとこ――ってか? こんなとこ弄られて反応(かん)じるんだ?」  嘲笑も罵倒も最早どうでもいい。  漏れ出す嬌声がとまらない―― 「……っそーゆーてめえだって……ヒトのこと……言えたギリかっ! ぶっとい傘おっ勃てやがって……みっともねー……!」  焦らしてないで犯るんなら早くしやがれとばかりに悪態をついてはみたものの、正直なところ焼け石に水の状況は変わらない。  男として組み敷かれる敗北感も、淫らに反応する自分自身の身体も、何もかもが征服される感覚が自らを苛んでいく。 「指でこんなになってちゃ、コイツ挿れたらどうなっちまうんだ……ってなー?」  氷川はグイと紫月の身体をソファの上で引っくり返すと、腹這いにさせて後方からぴったりと彼を包み込むように抱き直した。 「……っ……るせーっ! てめえなんかっ……! 野郎相手にゃ童貞の……くせしやがって……!」 「は、バッカじゃね? そーゆーてめえは『処女』じゃねえってことかよ? 自分で暴露してりゃ世話ねえなー? やっぱお前ってすっげ可愛いヤツってか? マヌケ、ともいう?」  ニヤケまじりの言葉が耳に痛い。ついぞこぼれてしまった台詞を悔いたところで覆水盆に返らず――だ。  それ以前にどうしょうもないこの格好。素っ裸にさせられて、いいように弄ばれて、反撃すら叶わない情けなさが辛辣な思いを突き付けてくる。  乱暴に片脚を持ち上げられ、逸った雄が押し当てられた感覚に、紫月はキュッと唇を噛みしめた。  野郎とは初めてというだけあってか少々戸惑いがちに、だが氷川の方も欲情には逆らえないのか、次第に余裕がなくなっていくような吐息の荒さが耳元を揺さぶる。

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