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第73話

 鐘崎のストレート過ぎる物言いはうれしくもあり、至極この上ないが、よくよく考えれば出来過ぎてもいるようで、半信半疑に陥ったりもする。彼に限って他人を騙したり嵌めたりすることは有り得ないだろうとは思うが、出会って間もないのに絶対的に信頼をおけるかと言われれば、確たる自信もない。 「やっぱ外国育ちって俺らとは感覚違うのかなぁ……」  まるでうわ言のように呟いていたとでもいうのだろうか、昼休みのうららかな屋上で、菓子パンをかじりながら剛が首を傾げて顔を覗き込んできたのに驚かされた。 「うわっ……! なんだいきなり……!」 「そりゃこっちのセリフだろ? さっきからボーッとしちゃってよ、どうかしたのかー?」  少し遠目のフェンスの辺りで鐘崎の豪華な弁当をうれしそうに漁っている京の姿をぼうっと見やりながら、紫月もまた剛と肩を並べて菓子パンを頬張った。 「別にどうもしねえよ。つーか、相変わらずだな京の奴。あいつの弁当を分けてもらうのが日課になってるって感じじゃん」 「ああ、遼二の中華弁当だろ? 俺もこないだ味見さしてもらったけど、確かに旨かった!」 「ふぅん、そうなんだ」 「それよか今朝は遼二がお前ん家まで迎えに行ったってじゃん?」 「ああ、うん」 「また桃稜の連中が絡んでこねえとも限らねえしな。あいつなりに心配だったんだな?」  まるで『いい奴だよな』とでもいうような感じで、京と戯れている鐘崎に視線をやりながら、剛がそんなことを口走っていた。その横顔からは、彼もまた鐘崎に対して好印象とか信頼できるといった感情を持っているのだろうということが一目で分かる。やはり誰の目から見ても、鐘崎は信頼するに足るといえるのだろう。 「ま、確かに……悪い奴じゃねえと思うわ」  あえてぶっきらぼうにそう返しながら、紫月はまた一口、菓子パンを頬張った。  日増しに強くなってくる陽射しに、少し汗ばむ陽気が初夏の訪れを告げている。吹き抜けるそよ風が心地いいと思える、そんな午後だった。 ◇    ◇    ◇

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