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第180話
と、そこで帝斗が再び話に割って入ってきた。
「今はね、まだ僕も高校生の身分だし、何ができるというわけではないんだけれども――」
帝斗は一旦、そこで言葉を止めると、意思のある眼差しで氷川を見つめた。
「ねえ氷川君――キミには話しておきたいと思うんだけれどね。僕は修業したら、この天音さんと一緒に綾乃木の家名を取り戻す心づもりでいるのさ。無論、僕には兄弟もいないし、我が粟津家の跡継ぎは僕しかいないから――粟津の名前もきちんと背負っていく覚悟はある。つまり、粟津と綾乃木を共に成長繁栄させていきたいっていう夢がある。僕はね、一生涯掛けてこの天音さんと――パートナーとして共に生きていきたいと思っているんだ」
「……パートナー……?」
僅か首を傾げながら、氷川は不思議そうに帝斗を見つめた。
「ああ。僕は天音さんを心から尊敬していてね。この世の中で――一番大切な人でもあるんだ」
「――!?」
さすがに突飛というか、刺激の強すぎる発言だったわけか――何ともいえない唖然とした表情で固まってしまった氷川を見つめながら、
「言っている意味は――分かるかい?」
帝斗は楽しそうに微笑んでみせた。
「いや、まあ……その、何となくは分かるが……」
「まあ、端的に言ってしまうと、僕は天音さんにゾッコンなのさ。つまり恋人として真剣にお付き合いをしているということなんだ」
「――! そう……なのか」
「だからというわけじゃないんだけれど、僕はキミと冰を引き合わせることに協力したのさ」
「――? どういう意味だ……」
「新学期の番長対決の時にキミら二人を見て、感じるところがあってね。キミはタイマン勝負とやらを放っぽってまで冰に興味を示していたろ? それに冰の方もそうさ。あの集まりに連れて行って以来、ぼうっとしていることが多くなってね。彼の様子から、もしかしてこれは恋煩いじゃないかって思って――」
「恋煩い? あの冰が……か? って、……誰に……?」
「キミに決まってるじゃないか。冰はあの日以来、僕と会う度にキミのことを話題に出すようになったんだ。彼、見掛けによらず案外晩熟なところがあるからね。自分じゃ気が付いていないようだったけれど、何かにつけてキミのことばかり気に掛けていたのは確かさ」
氷川は滅法驚いた。確かにあの番格対決の時に、見学と称してこの帝斗に連れて来られていた冰に興味を覚えたのは事実である。だが、まさか冰の方も自分に気持ちを寄せてくれていただなどとは夢にも思わなかったからだ。
帝斗の真剣な様子から、冷やかしや冗談でこんなことを言っているとは思えない。――が、素直に「ああ、そうですか」と信じられないというのもある。氷川はガラにもなく、ポカンと口を開いたままで硬直させられてしまった。
「まあそれはいいとして――氷川君。キミら、昨日はあれからどうしたんだ? うちの佐竹さんの話では、葉山の別荘に行ったそうだけど」
帝斗の問い掛けで、氷川はハッと我に返った。
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