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第187話

「あいつ、家族構成とかはどうなってるんだ? 俺はあいつが何処に住んでるのかも知らねえし、学園にはどうやって通ってるのかとか――。あとは、あいつの叔父貴ってのはどういった人なのかとか、お前なら色々詳しいと思ってよ」 「なるほど。僕は冰とは物心ついた頃からの幼馴染みだからね。キミの気に掛かることがあれば、何でも遠慮なく訊いておくれよ」  帝斗は、氷川が冰のことを気に掛けてくれるのがたいへん有り難いといったふうに頷いた。  帝斗の話によれば、冰の一家は氷川らが住む隣の市に住んでいて、父親が経営する会社は都内の一等地にあるとのことだった。学園は、氷川も知っての通り楼蘭学園で、帝斗らの白帝学園と同様に良家の子息が通うとして有名な男子校である。  家族構成は現在入院中の父親と、そして母親。冰に兄弟はなく、独りっ子らしい。 「冰のお爺様とお婆様は、冰の家から歩いて五分くらいのところに住んでいらしてね。だから同居の家族構成はご両親と冰の三人ということになる。ただ、家令の方を含めてお邸にはご家族の他にも四、五人住み込みの方がいらっしゃったはずだよ」  ということは、氷川の家とおおよそ似たような環境である。 「そうか。じゃあ、学園の方へはどうなんだ? 送り迎えの車とかで行っているわけか?」 「いや。冰は確か歩きで通っていたはずだよ。運転手さんはお父上専用だし、彼の家の近所は山坂が多いところでね。自転車を使うより歩きの方が楽なんだとかって」  それを聞いて氷川は若干眉をひそめた。 「じゃあ、通学時には一人ってわけか――。親父さんは入院してるわけだし……お袋さんの方はどうだ? 冰の言うには会社関係のことにはあまり携わってねえとかって話だったが」 「ああ、お袋さんは普段は家にいることが多いようだよ。ただ、現在は入院中の親父さんに付き添って都内の病院に泊まり込みらしいからね、ご自宅に戻られるのは週末に着替えを取りに来る時くらいだそうだ」  ということは、冰は家に一人ということか。無論、使用人はいるわけだから、まるっきりの一人というわけではないにせよ、氷川からすればいささか不安に思える環境だ。 「じゃあ、叔父ってのはどんな感じの人なんだ? できれば性質とか、冰には昔から馴染みがあったのかとかも知っときてえんだ」 「僕も冰の叔父様に会うのは年始の賀詞交換会で見掛ける程度だからね。親しく話したことはないんだけど、ちょっと取っつきにくい感じの方ではあるかなっていう印象だね。人見知りっていうのかな。パーティーでもご自身のブレーンを常に二人くらい連れていらっしゃるんだけど、周囲の人たちとは積極的に話されるタイプではない感じだね」 つまりは単独で社交の場に出る勇気は無いような人物とも受け取れる。帝斗の表情からは、言わずともそんな様が想像できるようだった。 「人見知りね。そんなんでよく川西って奴とツルめたもんだな?」 「川西の社長は叔父様とは正反対で、表面上の愛想だけはとびきり良い人だからね。特に目をつけた相手に取り入るのはお手のモンってところじゃないか? 口八丁で持ち上げるのが上手なのさ」

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