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第200話
その後、風呂に入り、一旦はベッドへ潜ったものの、やはりなかなか眠れそうにない。冰はむくりと起き上がると、隣の書斎へと続くコネクティングの扉へと向かった。
そっとドアノブを回し、中を覗く。
書斎には常夜灯が点いているだけで薄暗い。
その向こう――氷川の自室の扉の隙間からは煌々と灯りが漏れているので、まだ起きているようだ。
忍び足で扉へ近付くと、中からはテレビの音が漏れている。冰は思い切ってノックをしてみた。
「……白夜……? いるのか?」
声を掛けたが返事はない。
ドキドキしつつもノブを回して隙間から中を覗けば、バスルームの方からヘアドライヤーの音が聞こえていた。
きっと風呂を出たところなのだろう、しばらくするとドライヤーの音が鳴り止んで、氷川がバスルームから姿を現わした。
「――! 冰じゃねえか! どした? ンなところで突っ立ってねえで入れよ」
「うん……」
冰は言葉少なにコクコクと頷きながら、うつむき加減だ。それというのも氷川は下着一丁の姿で、バスタオルを首から下げているだけの姿だったからだ。
まあ風呂上がりならそれで当然なのだが、あまりに整った筋肉質の肢体を目の当たりにして、どこに視線をやっていいやら恥ずかしくなってしまったのだった。
これが普通の友人同士ならこんなにも意識することはないのだが、相手が氷川では少々話は別だ。経緯はどうあれ、当初はこの氷川に抱いて欲しいと頼んだくらいだから、ついそっちの方向で意識してしまうのは仕方のないことかも知れない。
それにしても見事なくらいの体つきである。筋肉隆々というわけではないが、力のありそうな二の腕に広い肩幅、そして胸から腹にかけては薄っすらとだが整ったシックスバックス。しかも下着は肌にピッタリと張り付くようなブリーフタイプである。少々目の遣りどころに困るような出で立ちに、頬が染まらないわけがなかった。
そんな冰の内心を知ってか知らずか、氷川の方はまだ汗を拭いながら朗らかな調子だ。
「風呂上がりでよ、暑っちーのなんのって! そろそろ扇風機でも出すかって時期だよな。お前の方はどうだ? 風呂は入ったのか?」
「あ、うん。風呂いただいて、寝ようと思ったんだけど。その前に……ちょっとアンタんとこ寄ってみよっかなって……思ってさ」
「おお、そうか。まだ時間も早えしな。何か飲むか?」
部屋の中にミニバーも設えられているようで、氷川はそこから冷えたミネラルウォーターのペットボトルを二本取り出すと、それを抱えて応接セットのソファにどっかりと背を預けるように腰掛けた。
「お前もこっち来て座れよ。ほれ、よく冷えてて旨いぜ」
抱えていたクォーターサイズのペットボトルを差し出しながら、首筋に掛けたタオルで汗を拭う。
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