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第221話

 そんな彼らの気持ちを代弁するかのように、春日野が静かに付け加えた。 「頭なんてのは、こうやって周囲が決めるもんだ。あの早瀬さんのように、てめえでこじつけるもんじゃねえよ」  春日野は皆に支えられている氷川を真正面から抱き上げるように両腕を差し伸べると、 「立てますか? 俺ん家、わりと近くなんで車でお送りします。少しの間、歩けますか?」  他に重傷となる箇所はないかと確かめながらそう言った。 「あ、ああ……すまねえ……な。世話を掛け……る」  氷川は苦しげに顔を歪ませながらも、素直に春日野が差し伸べた腕に身体を預けた。 「て……めえらは、後藤を……頼む。家が近え奴は……送ってやって……くれ」  こんな大怪我を負いながらも後藤を気に掛けた氷川に、皆は本当に涙するくらいの気持ちで頷いた。当の後藤は言うまでもない。 「氷川君……ごめ……なさい……本当にごめ……っ」  既にヒックヒックと嗚咽しながら、皆に支えられて氷川を見送ったのだった。  その後、氷川と後藤を送る為、一同は二手に分かれてその場を後にした。  特に怪我を負っている氷川の方には、教師らに見つからないようにと皆で彼を隠すように取り囲みながら、裏門から出ることにする。そうして春日野の自宅まで送り届けたところで、クラスメイトたちは帰って行った。 「どうぞ――とりあえずここに掛けてください」 「……ここ……は?」  誰もおらずひっそりと静まり返ってはいるが、医療具が並べられており、まるで保健室か医院のような造りの部屋だ。氷川は苦しげにしながらも、驚いたようにして部屋中を見渡してしまった。 「俺の両親がやってる医院です。町医者ですが――。今日はちょうど休診日で良かった。今、両親が来ますんで、怪我の処置をしましょう」  そういえば、この春日野の家は医者だったというのを思い出した。氷川の家には父親の交友関係で掛かり付けの医者がいるので、診てもらったことはないが、春日野医院といえばこの町では有名である。 「それから――制服も着替えた方がいいっすね。血が染みているし、酷え汚れだ。俺の服で申し訳ないですが、体格は似てるんで着られると思います。ちょっと取って来ますんで、辛ければ横になっててください」  そう言って春日野が部屋を出て行こうとした、ちょうどその時だ。入れ違いにするようにして、彼の両親がやって来た。 「おやまあ! ほんと、派手にやられたもんだわね」  中年だが顔立ちはとびきり美人といった感じの女性がサバサバとした調子でそう言った。 「すみません、氷川さん。俺の母です。遠慮がねえ性格なもんで、口は悪いし――失礼があったら申し訳ないす」  春日野は恐縮気味に頭を下げたが、母親の方はまるで堪えていないふうで、朗らかな笑顔を見せている。 「あなたが有名な氷川君ね? とにかく横になろうか。私は外科専門で、こちらは私の夫。内科医なのよ」

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