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第239話

「どうも私はキミのことを勘違いしていたようだ。おとなしくて可愛い子供だと思いきや、とんでもねえスレ者だ! その様子じゃ、既に私の趣味も知っているだろうし、こっちも思う存分楽しませてもらおうじゃねえか!」  川西は、側にいた男二人に冰を拘束させると、立て続けに冰の頬を平手打ちにした。 「……ッ! 何をするんです! 言うことを聞かなければ……今度は……ぼ、暴力ですか……!?」 「何とでも言いたまえ。聞き分けのねえ子供にゃ、躾ってもんが必要だ。まあ、そんくれえ生意気な方が()り甲斐もあるってもんだ」  ニヤニヤと気味の悪い笑いを浮かべたと思ったら、川西は冰の制服のシャツに手を掛けて、思い切りそれを引き毟った。  時期的にブレザーは着ておらず、ベストとシャツだけというのが、冰にとっては災難だった。ボタンが二つ三つと吹っ飛び、シャツが破けて胸元が大きく(はだ)かれる。  川西はそのまま冰の頭を押さえ込み、両脇から男たちに腕を拘束させると、腹の上に馬乗りになってベルトをゆるめ、一気にズボンを引きずり下ろした。 「何するんだッ、離せ! 離せよ……! 離せッ!」  冰は暴れ、思い切り両脚をバタつかせて、川西を蹴り飛ばさんとした。――が、既にズボンは太腿のところで絡まっていて、勢いよく剥かれたせいで、下着も尻半分まで脱げ掛かってしまっている。両腕は男たちに押さえ付けられているので、それらを穿き直すこともままならずで、羞恥心に冰は顔を真っ赤に染め上げた。  中途半端なそんな様を見下ろす川西の形相は、いやらしさで充満している。 「ほう! これはなかなか……! まだ真っさらで綺麗なこった……! お前さん、これで本当に男を知っているってか? 見たところ、自慰も殆どしてねえ初モンじゃねえか!」  川西は冰の下肢を舐めるように見渡すと、大満足だといった調子で、舌舐めずりをしてみせた。 「こんな上物、滅多にお目に掛かれるもんじゃねえな! 今まで俺が可愛がってやった奴らなんぞと比べたら、月とスッポンたぁこのことだ!」  これは楽しみ甲斐があるといったふうに、鼻息を荒くしてみせた。 「おい、雪吹! カーテンを締めろ! それから玄関で見張りをしてる男連中を呼んで来い!」  今までは取り敢えずも(つくろ)っていた敬語もどこへやら、冰の叔父に向かって命令を下すようにそう言うと、川西は本格的に冰を餌食にする算段を巡らせ始めたようだった。  川西の趣味は男を苛めながら陵辱することだ。無論、自分で()ってしまうのも有りだが、他の連中に()られるところを見て愉しむというのが好みの趣向である。下品極まりないニヤケ顔の下に、そんな妄想を巡らせているようで、川西の表情は下衆(げす)の悪人そのものだった。  逆に腰が抜けそうになっているのは冰の叔父の方だ。甥っ子が服を剥かれて悪戯されようとしている光景が気色悪いとでもいったように目を背けてタジタジとしている。 「あ、あの川西の社長さん……見張りの方たちにお声を掛けたら、私はお(いとま)させてもらって構いませんかね?」  もうこの場にいるのはまっぴらご免だと、苦笑いがとまらない。叔父には男を弄んで喜ぶといった趣味はないのだろう。 「ああ、構わん! あんたは帰って好きにしろ!」 「は、それでは失礼します。後はどうぞごゆるりと……」  叔父はヘコヘコと頭を下げると、一目散といった調子で部屋を出て行ってしまった。

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