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第240話
それと入れ替わるようにして玄関前で見張りに立っていた男二人が応接室へとやって来た。川西の手には、どこから持ち出してきたのか、荷造り用の太い紐が握られていて、あられもない姿の冰を前に鼻息を荒げている。
「おお、おめえら! 見ろ、こいつぁ最高の獲物だろうが!」
川西の言葉に、男たちも目を輝かせた。
どうやら彼らはいつも川西の”趣味”に付き合っている連中らしい。冰を見るなり、一発で興味をそそられたようだった。
「おい、一先ずこいつでこのガキを縛り上げろ」
川西から紐を受け取ると、男たちは舌舐めずりをしながらうなずいた。
「何すんだッ! ……こんなこと……犯罪だろうが!」
顔面蒼白で冰は叫び、拘束から逃れようと身を捩れども、中途半端に脱がされ掛かった状況は男たちを煽るだけだった。
「はは……! 随分とまた威勢のいい兄ちゃんじゃねえか!」
「こりゃ、楽しみ甲斐がありそうだ」
彼らは慣れているのか、抵抗されるのも満更ではないらしく、逆にもっと暴れろというふうに下卑た笑い声を上げている。
「川西の社長はいつものように、そこでゆっくりご覧になっててくださいよ」
「この野郎、どうしてやりましょうか? ただ犯 っちまうのは惜しい綺麗な兄ちゃんだ。先ずは薬でも盛って、この兄さんにもイイ思いさしてやるのもオツじゃねえですかね?」
男たちの提案に、川西も食指が疼いたようだ。
「そうだな。じゃあいつものを使うか」
そう言って、催淫剤を持ち出そうとした――その時だった。
突如、応接室の扉が開いたと思ったら、そこには少々青ざめた表情で冰の叔父が息せき切らして立っていた。
「何だ、雪吹か――おめえさん、今出て行ったばかりじゃねえか」
川西が怪訝そうな顔で、忘れ物でもしたのならさっさと済ませて出て行けと言わんばかりにそう声を掛けた。叔父の方をチラ見しただけで、ろくに目も合わさずに不機嫌顔だ。これからせっかくのお楽しみを始めようというところに水を差されたくないのだろう。目の前で男たちに縛られ始めた冰の抵抗する様に興奮しながら、うっとうしげに言い捨てる。
「おめえさんにゃ興味のあるこっちゃねえだろ? 甥が気の毒な目に遭 うのを見てえわけじゃあるめえ?」
「い……いや、それが……その……大変なんだ! 玄関を出ようとしたら……」
叔父の言うには門前で若い男がタクシーを降りて、家の中の様子を窺っているので、急遽帰るのをやめて引き返して来たとのことだった。
「川西様のお知り合いの方ではないようなんです……。ナリは立派ですが、どうやらまだ高校生くらいのガキでして……」
「高校生のガキだ? 知った顔なのか?」
さすがに川西も変に思ったのだろう、怪訝そうにしながらもひとたび陵辱行為をやめると、叔父の言葉に耳を傾けた。
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