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第2話

「少しはシャキっとしてくださいよ会長。そんなふうに締まりのない顔をしていると彼らに文句言われますよ?」  隣に腰掛けた副会長にそんな嫌味を言われて、より一層面倒臭そうにノビをしてみせた。  だいたい何だ。自分たちには一文の得にもならない上に、さして興味もないこんな集まりに顔を出さなければならないというだけでもダルいというのに、緊張感を持てという方が無理だ。まあ仕方ない、これも役割というので仕方なく出向いて来たものの、正直なところ早くコトを済ませてもらって退散したいというのが会長帝斗の本音だった。  それはさておき、一大イベントといわれるこの伝統行事の内容なのだが、そもそもは前年度の番格同士が卒業直前に行うタイマン勝負が万事の発端となっていた。  その勝負に負けた方は次の一年間、勝った方の学園の言いなりになるというとんでもないお約束事が成されているのだが、そんなものを素直に受け入れるバカはいない。しかも自分たちとは関係のない卒業生の勝敗に、高校最後の一年間を左右されるとあっては黙っている者のいないのは当然で、だから新学期になると同時に、その不本意な勝敗を覆す為の集会が次年度の番格同士で行われるのである。  昨年の勝負で勝ちを手にしたのは桃稜学園、敗者側の番格である一之宮紫月が先程から面倒臭そうな顔をしているのはそんな理由からだ。今後一年間の自由を勝ち取る為には、勝者である桃稜番格を倒さなければならないのは言うまでもないのだが、この伝統行事にはもうひとつ厄介な決め事が付随していた。  まあ勝った方に花を持たせるというか利があるのは当然のことで、番格勝負のやり直しに応じてやる代わりに、何かひとつ希望する条件を出せるというのがそれだった。ところが今年度の番格である氷川白夜が突きつけてきた条件というのが耳を疑うような代物で、『一発ホらせろ』というものだったわけだから、その場にいた全員が呆気にとられたのは言うまでもない。  ホらせろ――とはつまり性交、セックスのことだ。しかもこの場所に集まった全員の目の前でそれをやれというのだから紫月が呆れるのも無理はなかった。  通年の例ではたいがいの場合、集団暴行などが圧倒的だ。たった一人で相手校の複数人と戦わなければならないわけで、いかに番格が強いといえど、たいがいの場合は打ちのめされて終いになる。ぶっ倒れてもそれに耐え切ることができれば、前年度の勝敗がサラになるという決まりになっている。  それらがエスカレートしすぎない為にも仲裁役を置いているわけで、そういった意味でも白帝学園の存在は外せないといったところなわけだ。
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