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第245話

「――ったく、騒々しいったらねえな!」  ふてぶてしい足音で、ドスドスと階段を踏みならし、階下へと降りてくる。川西の前後には氷川を突き落とした張本人である屈強な男二人と、先程冰で遊ぼうとしていた男らまでもが一緒くたになって階下へと迫ってくる。 「いきなり土足で踏み込んできたと思いきや、階段踏み外して転落人生か? 自業自得だな、氷川の倅さんよ?」  薄ら笑いの川西の言葉に、冰はカッとなったようにして食って掛かった。 「酷えことをベラベラと! よくもそんなことが言えたもんだな! あんたら、人じゃねえよッ!」  涙まじりに叫ばれる、そんな冰の様子も川西にとっては屁でもないらしい。上手く邪魔者が始末できたと言わんばかりに、余裕の笑みまで携えている。 「不良同士の(いさか)いで片付けるまでもねえ。自分で階段を踏み外したのなら、こっちも処理が楽だってことだ。夜になったら、どっかの歩道橋下にでも放り出してくるまでだ」 「……ッ! あんた……ら、どこまで腐ってんだ……! 幸い意識があるからいいものの、まかり間違えば死んでしまうかも知れないところだったんだぞ! それを……そんな酷えこと……! とにかくすぐに救急車を呼んでくれ! 俺の携帯、返せよ!」  冰はこれ以上誰にも氷川には触れさせんとばかりに、うずくまる彼の身体を全身で庇うように両手を広げながらそう叫んだ。 ――が、川西は聞く耳など持たなかった。 「救急車だ? ふざけたこと抜かしてんじゃねえ。そいつをここから運び出してやるだけだって、こっちにとっちゃ手間なんだ。ここに放っておくわけにもいかねえし、全く……! とんだ迷惑もいいところだ!」 「なっ……!」 「それより――ちょうどいい。キミはそいつとイイ仲なんだろう? だったら、彼の目の前で()ってやるってのも一興だ。キミも彼に見られていると思えば、きっといい声で()いてくれるだろうしな? そう考えれば、この厄介者の登場も役に立つってもんだ」  川西の薄ら笑いに、冰はゾッと身を震わせた。こんな状況で、そんなとんでもないことを考えられるこの男が、悪魔に思えた。  側では先程から冰で遊ばんとしていた男たちがニヘラニヘラと気味の悪い舌舐めずりをしている。 「さすが社長ですね! そいつぁ、堪んねえ。犯し甲斐も百倍ですぜ!」 「愛しの彼氏の前で泣き叫ばせてやりますぜ! ああ、やべえや! 興奮してきた……!」  男らがそう言いながら、冰の両脇へと歩み寄り、左右から腕を掴み引き摺るようにして冰をベッドへと連れて行った。

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