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第9話

「別に俺は構わねえけど? 何ならしゃぶってやろか?」 「……ッ、はぁ!?」 「てめえの自慢の息子だよ。マジでヤるんだったら、もっとガチガチにしねえと入んねえぜ?」  そう言って笑い、そしてもっと熾烈な言葉で煽ってみせた。 「ま、でもホントにここで脱ぎ始まったら、てめえは公然猥褻罪だわな。あー、それとも強姦罪か」  氷川にとっては堪らない侮辱である。ここは割合広い倉庫なので、紫月とのこの会話が周囲に届いているとも思えないが、それでも思い切りプライドをへし折られたような気がしてならない。羞恥と怒りとでワナワナとし始めた拳で、いっそのことぶん殴ってしまった方がスッキリするかと思った――その時だった。急にその手を取られて、導くように持っていかれた先は紫月の胸板の上だった。  驚きつつも我に返って見下ろせば、今しがたの毒舌には似つかわしくない程の淫らな視線で見つめられて、氷川は戸惑った。紫月に取り上げられた掌は、彼の胸飾りの周辺をまさぐるようにユルユルと肌を這わせられながら誘導されていく。そうする内に、ふと指先が胸の突起を撫で、 「……っく、っあ……」  その瞬間にとてつもなく淫らな嬌声を聞かされて、氷川は我を失ったように頬を染めると同時にゴクリと喉を鳴らした。 「……てめ、よがってんじゃねえよ……このヘンタイ野郎が……!」  とりあえず罵倒すれども、火の点いてしまった欲情はおいそれと止められるものではない。いつの間にか制服のズボンの上からスリスリと股間をも撫でられて、氷川は驚いたように腰をビクつかせた。 「なあ、おい氷川――」 「……ンだよ」 「お前の――もう勃ってんじゃん。結構デケえのな」  舌舐めずりをするように唇を半開きにしながらそう言われて、不本意ながらもますます頬が染まる。 「ンなとこ触ってんじゃねえよ! ……クソッ、一之宮……! てめ、随分慣れてっみてーじゃねえか……! まさか普段からこんなことしてんじゃねーだろな!?」 「へへ、だったら何だ?」  ニヤリと笑ったふしだらな視線に、またしてもドキリとさせられる。そんな一瞬の隙をつかれたというわけか、 「――――――――ッ!?」  次の瞬間、ドカリと股間を蹴り上げられて、氷川の絶叫が倉庫内にこだました。  一瞬、何が起こったのか分からずに静寂が立ち込める。

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