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第12話
「両刀でどっちでもイけるとか、イキがってるだけじゃねえの? けどまあ、ヤれりゃ何でもいいってのは当たってっかもな。それを証拠によ、ちょっと色目使ってやったらその気ンなっちまってよ。からかいついでにしゃぶってやろうかって言ったらホントに勃たせてやがんの!」
「マジッ!?」
「マジ! ホントはタマでも握り潰してやろうと思ってアレ触ったらしっかり半勃ちになってっから、思いっきし蹴りくれてやったわけ!」
「うっわ、そりゃ最悪ー! ならしばらく動けなかったんじゃね?」
「だろーなー」
ぎゃははは、と大笑いが巻き起こり教室内はますます大騒ぎだ。
ふと、一番の仲間でもある剛が「だったら近い内に報復戦にやって来るんじゃねえか?」と口走ったのに、
「そん時きゃまた返り討ちにしてやるまでよ!」
紫月は意気揚々と笑ってみせた。そんな折だ。
始業の合図と共に担任教師が少々得意げな顔つきで教室の扉を開けた。いよいよ授業の始まりだ。
『あーあ』と、うっとうしそうにそれぞれの席に戻った紫月らは、担任の後方に連れられて入って来た一人の男の存在に気付いて、ハッとそちらを振り返った。
見れば一八〇センチは有に超える長身の、ガタイのいい男が物静かな感じでたたずんでいる。
「――何だあいつ?」
またザワザワとし始めた一同を静めるように、担任教師が大きく腕を振ってそれらを鎮めた。
「静かに! 静かにしなさい。紹介しよう。今日からこのクラスに転入することになった鐘崎遼二かねさき りょうじ君だ。彼はご両親の仕事の関係で香港で生まれ育ったそうだ。だから語学も中国語、英語、日本語が堪能な上に、学業成績は我が校始まって以来のトップ。とにかく優秀で真面目な素晴らしい生徒でね。席はーっと……一之宮紫月、お前の隣が空いてたな? 素行も勉強も文句なしの鐘崎君を見習うにはちょうどいい。よく面倒を見てもらいなさい」
やはり得意げに、ともすれば嫌味たっぷりにニヤけまじりでそう言われたのに対して、紫月はキッと眉を吊り上げた。
担任にうながされて、『鐘崎』と紹介されたその男がゆっくりと席に近付いて来る。
今しがた担任が言った通りに、きちんと着こなされた制服は違反の『イ』の字も見当たらないような生真面目さだ。その上もってカラーリングなどで弄っていないだろう黒髪は、少々長めではあるが、とにかくどこそこマジメを絵に描いたようでもある。
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