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第23話

「ま、ま、いーじゃねえか! 天気も絶好だしよ? この際一緒に連れションってのもさ~!」 「バカたれ! 連れションじゃねっだろ! メシだ、メシ!」 「あ、あははは……そーね、メシ! そうでした!」  まるで紫月のご機嫌を取らんといった調子で剛と京はおどけて見せた。 ――雄の本能というのは意外と鋭いものだ。  この転入生の男に何かしらの風貌を感じ取ってということなのか、この男を仲間内に加えれば、今までよりももっと権力が増すだろうということを見事に嗅ぎ分ける。まるでそう言わんばかりに京たちがこの男に興味を示すのを、紫月は肌で感じていた。  まあ自分とて他に邪な感情が一切無ければほぼ同じといったところか、とにかく癪な気持ちは半分あれど、確かにこの男と親しくなってしまえば、もっと番格の度合いが強靭になるとでもいうべき雰囲気をまとっているのは否定できない。  転入したてで、しかも海外から越して来たせいもあってか、格好こそクソ真面目だが、鋭く澄んだ目つきといい、どこそこ同じニオイを漂わせているのを本能が感じ取るのだ。  単におもしろおかしく不良仲間をやっていくには十分過ぎる魅力を持ち合わせた男なのだということは、紫月にも分かっていた。  おそらくは剛と京もそういった展開を望んでいるのだろう。だがしかし、今の自分にとっては彼が仲間に入ってくるとなると、厄介な問題が引っかかってくるのも否めない。  この男に対して抱く邪な感情、コントロールできないそれがひどく邪魔な存在というわけだ。  けれども親友二人は既にその気満々のご様子で、ここで自分がゴネるのもかえっておかしな展開だろう。  悶々とそんなことを考えながら、仕方なしといった調子で紫月は両肩をすくめると、賛同のゼスチャーをしてみせた。 ◇    ◇    ◇ 「おわっ! すっげー豪華な弁当だなっ! これって手作りってヤツ? アンタの母ちゃんが作ったの?」 「いや、これは家の者が……」 「家のモン? って、アンタやっぱ金持ちのボンボンかよ?」 「あ、いや、そういうわけじゃねえが……よかったら食う?」 「えっ!? マジ、いいのっ?」  こちらの気重を露知らず、すっかりいい感じに盛り上がっている京を恨めしそうに横目にしながら、紫月はかったるそうに菓子パンを頬張っていた。  そんな様子を気遣うように、もう一人の連れである剛が、おどけ気味に声を掛けてよこす。 「で? 今日は又、えれー重役出勤だったみてーだが、どーしたわけ?」  などと、冷やかし半分で肩をつついてきた。

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