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異世界へ(2)
水深は20センチくらいなはずなのに、おかしなことにごぼごぼと身体が沈んでいく。
沈むと言うより『吸い込まれていく』と言った方が当たっているか。
何とか浮かび上がろうと手足を動かすが、何の役にも立たない。
それでも手を目一杯上に伸ばした。
明るい光が段々と遠くなる。
そんな馬鹿な。
水中なのに、不思議なことに全く息苦しくない。
頭がガンガンする。さっき打つかったところだろう。
俺はどうなるんだ?打ち所が悪くてあの世に行ってるのか?
突然、辺りが真っ暗闇になり、俺は不安を抱えたまま意識を失った。
ゆっくりと浮上する意識。
気付いた時にはベッドに寝かされていた。
助かった?
ここ、どこだ、病院?誰かいないのか?
病院にしてはえらくレトロな雰囲気。
写真で見た中世の貴族の部屋のよう。
「痛っ」
起き上がろうした途端、頭に激痛が走った。
おまけに身体が怠くて起き上がれない。
痛てぇ……動きにくい手を無理矢理動かして左の側頭部に当てると、大きなたんこぶができていた。
「あっ、お目覚めになられた!よかった…」
安堵するような柔らかな声が聞こえ、すぐに外にいるひとに何かを言いつけたのか、誰かが廊下を慌てて立ち去る気配がした。
その方向に視線をやると、腰まである緑色の髪を緩く結え、白いローブのような服を着た声の主が近寄ってきた。
めっちゃ美人…でも、喉仏がある!?
「ご気分は如何ですか?」
「…頭が痛いです。ここは病院?あなたは?
俺は一体どうなったんですか?」
ゆるりと微笑んだその人が何か言葉を発しようとしたその時、
バターーーーーンッ!!
金色の風がドアを蹴破る勢いで突っ込んできた。
いや、正確には金髪のロングヘアーを靡かせたイケメンが、息を切らせながら入ってきたのだった。
ばちりと視線が絡んだ瞬間、甘美な電流が俺の身体を貫いた。
愛おしい、物苦しい、会いたくて切なくて待ち遠しかった…言葉にできないあらゆる感情が湧いてきて、息をするのも忘れてしまいそうだった。
この人は…誰だ!?
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