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異世界へ(3)
視線を逸らさぬまま、ゆっくりと彼が近付いてくる。
金色の目には薄っすらと涙が滲んでいる。
俺の胸は高鳴り、それなのに瞬きひとつすらできない。
「意識が戻ったか…よかった……」
枕元に跪くと、そっと俺の手を取った。
「このまま目を覚さなければどうしようかと…本当によかった。」
そして、俺の手の甲に恭しくキスをした。
まるで忠誠を誓う騎士のように。
おっ、俺は男なんだけど!何やってんの?
どう見てもこの人も男にしか見えないんだけど!
あなた、誰なんですか?何で俺、こんなに訳の分からない感情に押し潰されそうになってんの?
ってか、ここどこっ!?
心の中でツッコミ満載。それなのに言葉も出せず、見つめ続ける俺に
「…ぼんやりしているな。まだ意識が混濁しているのか…でも、もう大丈夫だ。
ガルーダ。」
「はい。」
「間違いない、彼は俺の番だ。そのつもりで。」
「御意。」
ちょっと待って。番?番って伴侶のこと?
一体それ、どういうこと?
思い切って口を開く。
「あの…番って?あなたは?ここはどこなんですか?日本…ですよね?」
突然声をあげた俺を愛おしそうに見つめ、片手で手を握ったまま、痛まない方の頭を触れるか触れないかの距離で包み込むと
「俺はこの龍の国の王、ルーストゥニフィ・クリニトカル。ルースと呼べ。呼び捨てにすることを許す。
お前は異世界から召喚された俺の番だ。
詳しいことは、追々そこにいるガルーダに聞くとよい。
今はまだ頭が混乱しているだろうからな。
とにかく…無事でよかった。1週間も意識が戻らなかったから…流石の俺も肝が冷えたぞ。」
最後の方は呟くように。
そして、俺のおでこにキスをひとつ落とした。
ひえーーーっ!キス、キスされたっ!
1週間?意識がなかった?
硬直して目を見開く俺に微笑み、いつの間にか背後に立っていた人に振り向きざま言った。
「ドリナ先生、お待たせしてすまない。」
ドリナ先生?今度は誰?
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