3 / 191

異世界へ(3)

視線を逸らさぬまま、ゆっくりとが近付いてくる。 金色の目には薄っすらと涙が滲んでいる。 俺の胸は高鳴り、それなのに瞬きひとつすらできない。 「意識が戻ったか…よかった……」 枕元に跪くと、そっと俺の手を取った。 「このまま目を覚さなければどうしようかと…本当によかった。」 そして、俺の手の甲に恭しくキスをした。 まるで忠誠を誓う騎士のように。 おっ、俺は男なんだけど!何やってんの? どう見てもこの人も男にしか見えないんだけど! あなた、誰なんですか?何で俺、こんなに訳の分からない感情に押し潰されそうになってんの? ってか、ここどこっ!? 心の中でツッコミ満載。それなのに言葉も出せず、見つめ続ける俺に 「…ぼんやりしているな。まだ意識が混濁しているのか…でも、もう大丈夫だ。 ガルーダ。」 「はい。」 「間違いない、彼は俺の番だ。そのつもりで。」 「御意。」 ちょっと待って。番?番って伴侶のこと? 一体それ、どういうこと? 思い切って口を開く。 「あの…番って?あなたは?ここはどこなんですか?日本…ですよね?」 突然声をあげた俺を愛おしそうに見つめ、片手で手を握ったまま、痛まない方の頭を触れるか触れないかの距離で包み込むと 「俺はこの龍の国の王、ルーストゥニフィ・クリニトカル。ルースと呼べ。呼び捨てにすることを許す。 お前は異世界から召喚された俺の番だ。 詳しいことは、追々そこにいるガルーダに聞くとよい。 今はまだ頭が混乱しているだろうからな。 とにかく…無事でよかった。1週間も意識が戻らなかったから…流石の俺も肝が冷えたぞ。」 最後の方は呟くように。 そして、俺のおでこにキスをひとつ落とした。 ひえーーーっ!キス、キスされたっ! 1週間?意識がなかった? 硬直して目を見開く俺に微笑み、いつの間にか背後に立っていた人に振り向きざま言った。 「ドリナ先生、お待たせしてすまない。」 ドリナ先生?今度は誰?

ともだちにシェアしよう!