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異世界へ(6)

「そんな馬鹿なことって…」 ふと、俺の手を掴むルースの手が震えているのに気付いた。 「ルース?」 ルースは俯いたまま、何も言わない。 ただ、込み上げる感情を必死で耐えているように見えた。 俺はどうやって声をかけたらよいのか戸惑い、黙ってルースを見詰めていた。 やがてルースはゆっくりと顔を上げた。 「霙、お前の望まぬ召喚だと分かっている。 俺を恨んでいるのだろう? 元の世界と無理矢理引き裂かれたようなものだからな。ましてや存在した証もなくなったのだから。 でも…… でも、ここに来たことを後悔させたりしない。 天地に恥じることなく誓おう。 必ず幸せにする。 だから、この国を俺達を……嫌わないでくれ。」 まるでプロポーズのような言葉。 何故か胸がキュッと甘く疼いた。 絞り出すように告げるルースは、心底辛そうな顔をしている。 嘘は言っていない。 彼の言うことは、きっと全て真実で、心からそう思っているのだろう。 俺が生まれた時から? これって、俺がそういう星の下に生まれついた、ってことなのか? じゃあ、親に捨てられて施設に預けられて育ったことや、社畜扱いされていたことやら、全部知っているってことか? 元の世界に俺の存在がないのなら、で生きていくしかない、ってことなのか? 「…元の世界には戻れない、って本当か?」 ルースは俺をじっと見つめた後、小さな声で、けれど毅然と答えた。 「もし戻ろうとしても、途中で身体も魂も塵と消えて、二度と輪廻できなくなる。 …完全に存在が消える。」 嘘だろ…いや、現実だ。夢じゃない。 俺は、何者かにはっきりした意思を持ってこの世界に連れて来られた。 この龍王の嫁として。 嫁になるかどうかは置いといて、この世界でしか生きられない、っていうのは理解した。 龍王…ルースは俺が生まれた時から見ていた、と言っていたな。

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