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伴侶の自覚(3)

今、正に話題にしていた本人が登場した。 ガルーダは、口元に微笑みを讃えて柔らかな視線を交互に俺達に向ける。 俺は、話の内容が内容なだけに身の置き所もなく、恥ずかしさが増しルースとは逆の方向を向いた。 「霙、おはよう。気分はどうだ?何か口にできたのか?」 ルースは俺と視線を合わすようにわざわざ回り込み、心配そうに尋ねてくる。 「…ルース、おはよう。 身体はまだ怠いけれど、気分はいいよ。 昨日のスープとポタージュとフルーツを幾つか食べた。 食欲はあるし…大丈夫だから心配いらない。」 気を利かせたのか、ガルーダがそっと部屋を出ていくのが見えた。 俺の答えに、ホッとした表情のルースは枕元に腰掛けると、手を伸ばし俺の頬に触れた。 「無理せずゆっくりと養生してくれ。 動けるようになったら、この国自慢の美しい場所へ案内しよう。」 どうしよう。触られるのが嫌ではなくなっている。 番だと認めてしまったからなのか。 自分のあまりの変わりように戸惑いを隠せず黙って見つめていると、そっと包み込むように抱きしめられた。 「…やっと、やっとこの腕に抱くことができた…霙、俺の愛しい番…」 感極まった囁き声に、ふるりと身体が震えた。 目を瞑り、逞しい胸の鼓動を聞く。 じわりと浸潤してくる肌の温もり。 止めどなく溢れてくる愛おしい思い。 ずっと求めていた安心感。自分の居場所。 そうか…ここが俺の帰る場所なのか。 抵抗しない俺をルースは更に強く抱きしめてきた。 「霙…あぁ、愛おしくて堪らない…愛している…生涯離さない…」 と、耳元で愛の言葉を紡がれる。 その言葉達をうっとりと夢心地で聞きながら、俺は大きく深呼吸した。 ルースの甘く芳しい匂いが胸一杯に流れ込んでくる。 不意に頭に『幸せ』という言葉が浮かんだ。 今までの人生、『幸せ』なんて感じたことなんかなかった。

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