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伴侶の自覚(4)
生涯孤独に生きるんだと感じていた。
告白されても『他に好きな人がいるから』と心にもない言い逃れをして断ってきた。
勿論自分から告白なんてしたことはない。
“いいな”と恋に落ちそうになったことはあっても、何故かそれ以上の感情は持たなかった。
それが、今…“番”だと、“伴侶”だと言われ。
耳に蕩けるような愛の言葉を紡がれて。
抱きしめられると、まるでその昔はひとつだったかのように、しっくりと馴染む肌に抱き留められて、恍惚としている。
相手はこの国の王様というハイスペックな男で、おまけに人間ではないというのに。
俺は一体どうなってしまったのか。
そんな戸惑いよりも、心地良さの方が上回って抵抗できない。
それよりも、もっと、もっと、もっと抱きしめてほしいと魂が訴えている。
「霙…」
名前を呼ばれて顔を上げた。
「霙…俺を……受け入れて……俺を愛して……」
途切れ途切れの切なげな吐息混じりの言葉が耳を打つ。
俺だけを見つめるその目は潤み、瞳に俺だけが映っている。
俺は魔法にでも掛かったかのように、その目を見つめ続けていた。
嘘偽りのない透き通った美しいゴールドの瞳が煌めく。
その美しさに吸い込まれそうになりながら、そっと手を伸ばし頬に触れた。
ぴく、とルースの身体が跳ねた。
「…ルース…俺は正直言って、ルースのことを愛していると言ってもいいのかどうか…分からない。戸惑っている。
だってルースも俺も男で…急に龍の世界にやって来て、自分の立ち位置も何がなんだかよく分からない。
…でも、初めて会った時の思いは、本当だと思う。
今も、こうして側にいると心地良くて安心する。
だから…少し時間をくれないか?」
精一杯、正直な気持ちを伝えた。
ルースは黙って聞いていたが頷くと
「…俺のことは嫌いではないのだな?」
俺が頷くと、ルースはホッとした表情を浮かべて、抱きしめる腕に力を込めた。
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