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伴侶の自覚(5)
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
目を覚ますと、ベッドに横たえられていて、キョロキョロと辺りを見回したけれど、ルースの姿はもうなかった。
ルースの腕の中は心地良くて、お腹も満たされていた俺は泥のように眠りについたのだろう。
…ルースは…政務に行ってしまったのだろうか。
はぁ…
ため息をついてゆっくりと起き上がる。
ふらつきもなくなり、座ることができた。
「ルース…」
思わず名前を呼んでしまった。
意識が途切れる寸前、おでこにそっとキスされたのを思い出した。
ぶわっと身体が火照り、顔が赤くなるのが分かる。
手でぱたぱたと顔を仰ぎ熱を覚ましていると、ノックの音がした。
「はい。」
「失礼致します。」
美味しそうないい匂いとともに入ってきたのはガルーダだった。
「そろそろお目覚めかと思いまして。」
「今目が覚めたんだ。
いい匂い。お腹…空いてる…ありがとう。」
「『ぞうすい』にしてもらいました。
食欲も少しずつ戻られているようですし。
お代わりもありますからね。」
「うん。
ねぇ、ガルーダ。どうしてポタージュや雑炊なんかのメニューがあるの?
この龍の国は俺の元の世界と同じ食べ物なの?」
ガルーダはふふっ、と優しく微笑むと
「先々代のお妃様も霙様と同じ世界からやって来た方で、その方にシェフが習いに行ったり、似たような食材を何年も掛けて探したり育てたりと、その当時みんなで『わしょく』や『ふれんち』を研究したそうです。
その時から受け継がれてきたレシピがありますし、霙様が番だと分かった頃から、ルース様に時々見せていただいていた水鏡を通して、最近の料理もシェフ達はずっと勉強していました。
ルース様が
『食べ物が変わると気も病んでくる。できるだけあちらの世界に似たような物を作れるようにしておいてほしい。』
と仰って、霙様がいつお越しになってもよいように随分気を配られたのです。
ですから、お口に合えば嬉しいです。」
「俺の前にも!?その人は何処に!?……そう…そっか…そうなんだ……
うん、とっても美味しいよ。
俺一人のために、みんなにそんな苦労を掛けてたんだね…
ごめん、本当にありがとう。」
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