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伴侶の自覚(7)

「…うわぁ…綺麗…」 まっしぐらにこちらに向かってくる金の矢。 けれど全く恐怖感などない。 動かなかった身体に力が漲り、その光に吸い寄せられるように窓の側に一歩ずつ歩いていく。 太陽を集めたような煌めきを撒き散らし、瞬く間に屋上に飛び込んできたのは、巨大な金龍だった。 あ、まさか。 すると、ドアがばんっと開いて、息を切らしたルースが現れた。 「霙っ!」 きっと、窓の側に立つ俺を見て、ルースが飛んできたのだろう。 この(ひと)はドアをそっと開けることはできないのか。 いつも慌てて飛び込んでくる。 おかしくて笑いを堪えるのに大変だった。 「霙、起きれるようになったのか!? 何処か痛いところはないのか?」 俺は首を横に振り 「遠くに金色の光が見えて」 ぎゅうっ 言い掛けた言葉を遮られ、息を切らせるルースに抱きしめられた。 お日様の匂いがする。 「驚かさないように戻るつもりだったのに、お前が窓に近付くのが見えて……矢も盾もたまらず突っ込んできてしまった。 順調に回復しているのだな、良かった。」 そっと髪を撫でられ、胸がきゅっとなる。 ルースの激しい胸の鼓動が耳殻に煩いくらいに響いていたが、やがて規則正しい音に変わった。 そんなに焦ってここに来たのか。落ち着いたのなら良かった。 っていうか、どんな遠くから俺のこと見えてたんだ!? 視力は幾つなのか、今度聞いてみよう。 俺はルースに抱かれたまま抵抗することなく体重を預けるように寄り掛かり、暫く髪の毛を撫でられていた。 時折、頭に何か柔らかい物が当たる。それがキスされていると気付くのに時間はかからなかった。 不思議とそれが心地良くて離れ難くて、ノックの音が聞こえるまで、その場でずっと目を閉じていた。 「霙様、失礼しま……あっ申し訳ございませんっ。」 「よい、ガルーダ。どうした?」 「はい、霙様に“あいすくりーむ”をお届けに…」 「アイスクリーム!?ガルーダ、アイスがあるの!?」

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