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伴侶の自覚(8)
ルースの腕から擦り抜けて、ガルーダのところへ。
俺を抱いた格好のままフリーズするルースが、苦虫を潰したような顔をしていたことなんて、全く気付かなかったよ。
「うわぁ…アイスだ!
凄い!これも作ってくれたの?」
「はい。これはシェフ見習いのエンジュという者が。お口に合えば嬉しいのですが、と申しておりました。」
「食べてもいい?」
「勿論です!」
クリスタルの足の付いたボウルに、バニラ?(だろうか)白いアイスがこんもりと盛られている。
銀のスプーンで掬って口に入れる。
それはアイスのようなねっとりとしたものではなく、少しシャリシャリとして桃のように甘くて冷たくて、アイスとかき氷の中間みたいな、シャーベットみたいな食感で、すぐに口の中で溶けてなくなった。
「美味しい!」
「エンジュに『霙が喜んでいる、ありがとう』と伝えておいてくれ。」
いつの間にか俺の隣に座っていたルースが、ガルーダにそう言っていた。
ルースも味見したいのかな…俺の口が動くのと一緒に、もごもごと動いてるよ。
「ルース、ルースも食べてみて!美味しいから!」
ひと匙掬って、ルースの口元に差し出した。
ルースは戸惑いつつも、何故か顔を真っ赤にしながら口を大きく開けたので、その中にスプーンを入れてやった。
「…うん、美味いな。ありがとう。」
ルースは耳まで真っ赤にして俺と反対の方を向いた。
ん?何で?えーっと……
ああーーーっ!間接キス!
俺、俺って何てことを……うっわぁーっ、ヤバいっ!
自分のしでかしたことに今更ながらおろおろとするが後の祭りだ。
誤魔化すように、その後はひたすら無言でスプーンを口に運んだ。
チラチラと横目で見てくるルースの甘い視線を無視して食べる。
俺の中の熱と反するように、口の中のアイスは冷たさを増し、こめかみがキーンとなった。
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