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伴侶の自覚(9)

それからの俺は食欲も増して日毎に回復していき、もうすっかり日常生活(果たして日常と言えるのか!?)を送れるほどになった。 部屋の中を動けるようになると、城内の散策ができるようになり、まず1番に厨房に赴き、料理長達に丁重にお礼を言った。 初めて俺を見た彼らの顔と言ったら…あまりに歓待されて、逆に俺の方が申し訳なくなるくらいだった。 「霙様!わざわざこんな所まで…恐縮です。 どんな物がお好みなのか、教えていただけませんか? ここに伝わっているレシピよりも、もっとお喜びいただける物を勉強したいのです!」 そう彼らに請われて、毎日厨房に顔を出すようになった。 俺も自炊が長かったから割と料理には自信があったので、ありがたい申し出だった。 驚くことには、食材や調味料等、俺が使っていた物と殆ど変わらなかった。全てこの国で作るオリジナルなんだって。 元々、この国にはない物があったらしい。 一体どれだけの努力と研究を重ねてきたのだろう。 だって、醤油や味噌を作るだけでも大変なんだよ!?大豆から育てなくちゃならないんだぜ? 作ってくれる農家さんの所にも顔出さなくちゃ。 俺のために……足を向けては寝られない。 ガルーダは 「彼らもこの仕事に誇りを持って命を掛けていますからね。 霙様、何でも仰って下さい。 その方が彼らも喜びます。」 と言ってくれて、俺も少し気が凪いだ。 畑にも行ってみた。 ここでも大歓迎を受け、広大な田畑を案内してもらった。 日本の風景と変わりなくて、ちょっとセンチな気分になってしまった。 責任者のミリョンは、青い髪を無造作に縛った体躯のいい大男だった。 無口だけれど、的確な指示の元、大勢の人達が農作業に勤しんでいる。 種とかどうしてるのかと聞いたら、遠方の国から輸入しているのだと説明してくれた。 そうか。 この世界はこの国だけじゃないんだ。交易も行われてるんだな。

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