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怖いもの知らず(2)
「霙様っ!?」
「どちらに?」
「まぁ、そんなに動けるくらいにお元気になられたのですね!」
「霙様、どちらに?」
広い廊下を駆け抜ける俺に、すれ違う人達が口々に問い掛けるが、ごめん、構ってられない。
返事もすることなく無視して、ただひたすらに裏門へと走って行く。
遥か後ろの方から
「霙様ぁーーっ!誰かっ!霙様をお止めしてくれーーっ!」
ガルーダの絶叫に近い声がしてくる。
何が起こっているのか分からず、けれど皆んな手を出せずに、ただ呆然と俺の去った後ろ姿を見ていたそうだ。
ガルーダを振り切り突っ走った先に……
あった、裏門!
少しずつスピードを緩めると息を整え、門番のジャティに作り笑顔で話し掛けた。
「ジャティ、いつもありがとう。
ねぇ、ここ開けて。今からミリョンの所へ行くんだ。
外で護衛の人も待ってるから心配いらない。」
「霙様、ご機嫌麗しゅう。
ミリョンの所へ?何か収穫ですか?」
「うん、そう。
待たせると悪いから、早く開けて。」
「はい……それにしても城内が何か騒がしいような……」
「入り込んだ野良猫が暴れてたらしいよ。
ね、早く早く!」
「はい、承知致しました。
お気を付けて行ってらっしゃいませ。」
「ありがとう!行ってきます!」
疑うこともなく俺を送り出してくれたジャティに心の中で(ごめんね)と言って、俺は外に出た。
異世界にたったひとりだという怖さよりも、『信じてもらえてない』『ここでも結局ひとりなんだ』とかいう孤独感に襲われて、思わず飛び出してきてしまった。
ガルーダにも悪いことしちゃったかな。
でも、少しの時間ならいいよね。だってどうせ俺は『ひとり』なんだから。
元よりミリョンの畑に行く気はなかった。
頭からフードを被ると誰だか分からないはず。
気を取り直して、何処に行く当てもなく歩き出した。
見知らぬ人の雑踏に紛れて、ただ歩き続けた。
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