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怖いもの知らず(3)
市場のような、店が立ち並ぶ通りに出てきた。
へぇ……色んな物売ってる。
見たことのない野菜や果物がずらりと並び、値切りの応酬や呼び込みの声が飛び交っている。
魚や肉はケースに入って売られていた。
何の肉なんだろう。家畜なんていたっけ。
結構衛生的なんだな。
この野菜、どんな料理になるんだろう。
料理長のエストロにこの国の料理も作ってもらおうっと。
なーんて興味津々眺めていると
「お兄さん、いらっしゃい!うちのは新鮮で美味いよ!
どれにする?おまけしとく…あれ?
アンタ…何処かで見たことのある顔だな。
黒髪、大きな目、小さな口…
ん?まさか…新聞に載ってた…ルース様の」
ヤバい!逃げなきゃ!
またまたダッシュでその店から逃げ出した。
どうして逃げなきゃならないのか分からないけど、とにかく逃げた。
はあっ、はあっ、はあっ……
こんなに走ったのも久し振りだ。
寝たきりだった身体は、筋肉が落ちて体力もなくなってる。
息切れを何とか落ち着かせると、お腹が空いてきた。
「はあっ…お昼ご飯食べてくれば良かった。」
あれ?ここは何処なんだろう。
闇雲に走ったから、路地に迷い込んでしまったのだろうか。
何となくヤバそうな雰囲気の建物が並ぶ。
ここにいてはマズい。
「帰らなくちゃ…」
こんな時の勘は当たる確率が大きい。
辺りを見回すと人影もない。安心していいのか悪いのか。
とにかくここから離れないと。
ぐるりと遠くを見渡すと、右側に城の塔がうっすらと見えた。
そうだ!あれを目印にして帰ればいい。
走り疲れて棒のように感じる足を動かそうとしたその時、ふっと影が差した。
「見かけねぇ顔だな。
ここをどこだか知ってて入ってきたのか?
…ん?……これはこれは。
極上の玉が自ら飛び込んでくるとはな。
おい、ボスに知らせてこい。」
目の前に立ち塞がったのは、黒髪の大男達だった。
ヤバいマズい。ヤバいどころじゃない!
逃げなきゃ!
その瞬間、首根っこを掴まれて動けなくなった。
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