26 / 191

怖いもの知らず(6)

「異世界から来たのなら何か知ってるはずだろ!? 身体中に赤い発疹が出てるんだ。 それに凄い高熱で…… おーい!誰か鍵持って来てくれ!」 反論する暇も与えられず、部屋から引き摺り出された俺はある部屋の中に押し込まれた。 赤い発疹!?俺の知ってる病名は『麻疹』しかないけど。 ここの国の人は罹ったことないんだろうか。 小さなベッドには、こんもりと何かが布団を被り、時折唸り声が聞こえる。 「お嬢!ちょっと顔を見せて下さい! 龍王のお妃が来てるんです! 何か分かるかもしれない、お願いします!」 その声掛けに、ゆっくりと布団が下ろされ、ひょっこりと少女の顔が現れた。年の頃は小学校低学年くらいか? 目は潤み、少し顔は浮腫んでいるようだが、青い髪でボスによく似ている。 顔は赤く、吐く息も荒くて熱い。 「ごめん、ちょっと『あーん』して口の中を見せて。」 戸惑う素振りを見せながら、彼女はゆっくりと口を開いた。 ポツポツと白い斑点が広がっている。 麻疹の症状に似ている。きっとそうに違いない。 「今は熱が出てしんどいけれど、少ししたら楽になるからね。 心配しなくていいから。 あのー、タオルを4、5枚と冷たい水を貰えますか?」 心配そうに見つめる男に頼むと、すぐに持ってきてくれた。 固く絞り、“お嬢”に断りを入れてから、脇の下と耳の後ろ、そしておでこに、布団やシーツが濡れないように当ててやる。 そしてドアの外にひしめき合う男達に呼び掛けた。 「小さい頃、同じような症状になった人はいますか?その人はもう移らないから側にいても大丈夫です。 なったことがない人は、出来るだけ離れて換気の良い部屋にいるように。 皆んなしっかり睡眠と栄養を取って下さい。」 途端にわらわらと出て行く者、その場に留まる者、騒然となった。 俺は定期的にタオルを濡らしては変えてやり、口に水を含ませてやった。 あぁ…アイスでもあれば食べさせてあげれるのに。

ともだちにシェアしよう!