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非常事態(1)
「霙様っ!霙様ぁーーっ!誰かっ!霙様をお止めしてくれーーっ!」
一体何が起こったのか。
霙様が突然キレて飛び出して行った。
慌てて追いかけるものの追いつけない。
そんな体力、何処に温存していたのか。
それ程までに回復されたのなら喜ばしいことだけれど、今はそんなこと言っていられない。
大声で叫ぶが、皆きょとんとしてフリーズしている。
俺達が通り過ぎてからやっと、大変なことが起こっている、と認識したのか、わらわらと後を追ってきた。
「霙様ーーーっ!」
何処に行った?
城内には身を隠すに適する場所が山程ある。
いや待て。
この方向は……裏門!?
マズい。今、外に出ようものなら……
そのためにルース様が秘密裏に動かれているというのに。
俺の後を追ってくる部下に、走りながら指示をする。
「急いで裏門を閉じるように!
動ける者全て総動員で霙様をお探ししろっ!」
そして急いで2人の息子を呼び出した。
「はーい。何だか城内が騒がしいけどどうしたの?」
「エルグっ!霙様がいなくなった!
城外に出てしまわれたかもしれない!
頼む、探してくれっ!」
「えっ!?分かった!俺の部隊を動かす許可を出してくれ!」
「もう出してある。頼む!」
「ラジャー!」
「グリスっ!霙さ」
「分かった!俺はフォルダと連携する!」
「頼む!」
そしてすぐに地上部隊のフォルダに
「フォルダ!グリ」
「ラジャー!俺達は城内と城外に分かれます!
逐一報告するから指示を頼みますよ!」
皆、話の途中で察知し動いてくれる。
えらいことになった。どうか城内に留まってくだされば良いのだが。
ルース様にもお知らせせねば。
執務室に向かいながらあちこちに指示を送る。
「ガルーダ様!」
前方に、フォルダの部下のエリシオンが、項垂れたジャティを引っ立てて来るのが見えた。
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