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非常事態(2)
「エリシオン!その者は…裏門番のジャティか?」
「はい!
大変です!霙様に頼まれて城外へお通ししたと申しております。」
「何だとっ!?どういうことだ!?」
ジャティは平伏すと
「申し訳ありませんっ!
お付きの者が城外で待ってると…ミリョンの畑の収穫に行くからと仰せになって……
確認せずに申し訳ございませんっ!!」
「エリシオン、ミリョンの所へ!」
「すぐに手配をいたしましたが、どうやらミリョンの所へはいらしてないらしく……道中や近辺を陸空で探しておりますっ!
城内の部隊も一個隊を残して全て城外へ探索に出ました!」
「……何てことだ……」
最悪の事態が起きてしまった。
ルース様へ何とお伝えすれば良いのか…
そこへこの城の主の声が聞こえてきた。
「ガルーダ、えらく騒がしいがどうしたのだ?」
「ルース様っ!申し訳ございませんっ……霙様が…私の言葉が足りなかったせいで城外に飛び出して行ってしまわれました!
ただ今捜索しております!
申し訳ございませんっ!!」
「何っ!?……何故そんなことに……いや、とにかく霙を探し出してくれ!
こんなことしていられない。俺も行くっ!」
「ルース様まで動かれたら、それこそ相手の思う壺。どうぞ落ち着いて下さいっ!」
ギリギリと歯を食い縛る龍王の顔が赤く染まってきた。
「ガルーダ様っ!あっ、ルース様っ!
霙様を市場で見かけた者がおりました!
声を掛けると驚いて逃げて行ったとのことですっ!」
「市場……路地裏も徹底的に調べろっ!」
「はっ。」
「マズいな……万が一イスナの町にでも迷い込んでしまったら……
エリシオン、全軍を挙げて追跡してくれ!」
「はっ。」
「ジャティ、詳しく聞かせてくれ。」
「はっ、はいっ!
霙様はいつものご様子で変わりなく…そう言えば今思い返すと、無理に笑ってらしたような…」
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