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非常事態(3)

涙目のジャティは、一生懸命に思い出しているようだった。 「……そして、お優しくねぎらいの言葉を掛けて下さってから 『ねぇ、ここ開けて。今からミリョンの所へ行くんだ。 外で護衛の人も待ってるから心配いらない。』 早く早くと急き立てられて、私も護衛がいるなら、と確認もせずに門を開けてしまいました。 申し訳ございませんっ!」 「他にも門番がいたはず。その者達はどうしてたのだ?」 「偶々交代の時間と入城者の対応に掛かっていて、私ひとりだったのです。」 「何とタイミングの悪い…それで?霙は?」 「『城内が騒がしいけど何かありましたか?』 とお尋ねしたら 『野良猫が入り込んで暴れてるらしいよ』と… そして『行ってきます!』とお元気に出られたので……申し訳ございませんっ!」 ジャティは平伏したまま、ガタガタと震えている。 ルース様は大きく息を吐くと 「一概にお前を責めることはできない。 けれど確認を怠ったのは職務怠慢だ。 追って沙汰を申し付けるから自宅で待機せよ。 …妙なことを考えるんじゃないぞ。 命あって償いができるのだから。よいな?」 「ルース様っ………」 ジャティは蹲って泣き始めた。 「さて」 とルース様が俺に向き直った。 「ガルーダ、一体何があったのだ?」 「はい、ご説明いたします。」 執務室に戻り、事の次第を詳細に説明した。 ルース様は物憂げにため息をつくと 「俺から本人にはっきりと伝えておけば良かったのか。 けれど…この世界に来てまだ気持ちの揺らいでいる霙に 『お前は命を狙われている』 なんて言えるか!? 証拠はほぼ集まったのだが、決定的なものがないと、すぐに牢から出すことになる。 それでは意味がないからと動いていたのだが…それが裏目に出たということか……」 「霙様はルース様のお身体をとても心配しておいででした。 …よくよく考えると、いくらルース様のご伴侶とは言え、あの方はか弱い女性ではありません。 聡明で優しくとも立派な男性です。」

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