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非常事態(4)
「ふうっ…そうだったな。
分かってはいるのだが、待って待って待ち続けて、ようやくこの腕にかき抱いて……あの愛らしい笑顔を見ていると、つい守りたくなる度合いに拍車がかかってしまって…
ガルーダ。お前の責任ではない。
霙を対等に扱わなかった俺に責任があるんだ。
とにかく、一刻も早く霙を見つけ出さなければ。
これ程大騒ぎになっているんだ。
何か仕掛けてくるかもしれない。
このどさくさに紛れて、万が一にでもその命を狙われるようなことがあれば……市場の近くで迷っているだけなら良いのだが。」
「ルース様っ!私の命を掛けてお探しいたしますっ!」
「簡単に『命』『命』と言うな。
お前がいなくなったら皆が困る。たった一つしかないものをそう簡単に掛けるな。
ナルジやエルグ達にどんな顔を合わせろと言うのだ?
お前達は……もっと自分を大切にしろ。
…奴らに不穏な動きはないのか?」
「はっ、ありがたきお言葉…痛み入ります…
コーダが密かにその動きを探っております。
今のところ、特に変わりはないとのことです。」
「そうか。それならば良い。引き続き見張りを付けるように頼む。
それにしても、霙はやんちゃな子猫のようだな。子猫ならば誰にでもかわいがられるはず。
今頃誰かに助けてもらっているのではないだろうか。
あの容姿にあの性格、誰もが霙のことを好きになるに違いない。
…あちらの世界では相当苦労していたようだがな。」
「こちらに来るためにワザと試練を受けておられたような気がします。
それにしてもあんなに早く走れるとは…もうお身体も大丈夫そうですね。」
「あぁ。
早く見つけてこの腕に抱きしめてやりたい。
ガルーダ、頼む。
どんな方法でも構わない。霙を…俺の大切な霙を……頼む。」
「ルース様……本当に申し訳ございません。
現状どうなっているか調べて参ります。」
「頼んだぞ。」
一礼して下がった。
何という失態。何という落ち度。何という不覚。
己の無力さに腹が立ってならない。
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