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非常事態(8)
「私も大丈夫です!昔は死の病と言われましたが、特効薬ができて今ではほぼ絶滅したはずなのですが…やはり遠方への交易が広がると、そういった物も流れてくるのですね。
直ちに連絡して参ります!失礼っ。」
エリシオンが疾風のように去って行った。
それからは怒涛の展開となった。
城内の医師全てが集められ聞き取りを行ったところ、運が良いことに全員罹患者であった。
後で聞いたところによると、昔その病気をきっかけにして多くの者が医師を志したのだという。
そこから城内に残る者とイスナ行きの者を振り分け、備蓄してある医薬品を準備し、手筈が整った。
イスナと聞いて尻込みする者もいたが、それは希望を聞いて選抜した。
霙様の手紙を持って来たイスナの者はラグジドと言い
「手紙には書いてませんが、霙様は
『この町に医者がいないのなら、他の病気の人もまとめて診てもらえばいい。
国の民を救い守るのが王族の務めだろ。』
とおっしゃって……イスナの民は皆、霙様に心からの忠誠を尽くすことを誓ったのです。」
それを聞いたルース様の瞳が潤んでいるのに気付いたのは、私だけではなかった。
やはり待ち望んだ甲斐があった。
霙様は、ルース様と共にこの龍の国を護り美しく育んで下さるお方なのだ。
…薬に関しては、ドリナ先生が『遠国のエグゼイラで患者が出たと風の便りで聞いていたから、来年辺りこの国にも出るかもと思って準備していたんだが…案外早かったね』とのことで、先見の明に脱帽した。
ルース様は一刻も早く霙様のもとに駆け付けたい、と落ち着かない様子で、既に龍体化して屋上で待機していた。
ルース様を守るように控えている数十体の龍の鱗が月光に煌めいている。
「出立だ!」
咆哮と共に一斉に空へ舞い上がった。
どうぞご無事で……
祈りを込めて流星群のような輝きを見送ると、霙様をお迎えすべく自分の仕事に取り掛かった。
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