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企み(1)

その頃、神官グルディの館では、何やら密やかに話し合う2つの影があった。 それは館の主と、ルースの義弟(おとうと)ラジェの姿。 「何やら城内が騒ついているが、何かあったのか?」 「ガルーダ様が、逃げる霙様の名前を呼びながら追い掛けているそうです。それで城内は大騒ぎになっております。」 「追い掛けっこか?はっ、目付役も暇なもんだ。 それで?」 「失礼いたします。 噂が交錯しておりますが、霙様が行方不明だと。」 「何!?それは誠か!? そうか…そうなると計画も練り直しか… こちらに勝運が舞い込んできたかもしれぬ。」 「どうやら城外へ出て行かれたそうで…」 「尚のこと好都合。 早く見つけて始末した方が良いのではないか?」 「いえ、それはマズいでしょう。 我が国全軍を挙げて捜索しているはず。 そんな時に下手に動いて見つかって、万が一こちらの計画が漏れたら、良くても悪くても北の塔に牢閉。 何れにせよ我々の栄耀栄華はありませんぞ。」 「そうだな。 どうせならイスナに迷い込んで、そのままそこで始末してくれれば良いのだが。」 「残虐非道な奴らのこと。そうなるやもしれません。 イスナでは我々も手が出せませんから。 まぁ、どちらにせよ計画は最初から練り直しですな。 王の唯一の番がいなくなればルース様は失脚。 そうすれば、王位継承権はラジェ様、あなたのものですよ。」 「ふふっ…やっと日の目を見ることができるのか…… 一刻も早く始末したいところなんだが、取り巻きが邪魔だ。 軍を率いるあの宰相の息子達は中々の切れ者らしいから、手懐けるのも大変かもしれんがな。」 「の言うことなら逆らいませんよ。 ラジェ様。」 「ふっ……新国王か…中々に良い響き。 そうなった暁にはそれ相応の褒美を取らせねばな。 楽しみに待っておくと良い。」 グラスの中の氷がカラリと音を立てた。

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