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イスナの町で(1)

熱い息を繰り返すレイチェを目の前にして、霙は考えていた。 熱が出た時は口当たりの良い物を食べれば良いんだけど……そうだ!材料があるなら作ればいいんだ! 俺は記憶を辿り、最低限必要な材料を手に入れてもらうように頼んだ。流石貿易が盛んな町、それらは瞬く間に運ばれてきた。 ドアの隙間から、興味津々の目玉が覗いている。 見てろよ。 最高に美味しい物作ってあげるからね。 確かこうやって冷やしながら混ぜていけば…… 「やった…できた……」 指先も冷えて物が掴めない程に疲労困憊したが、やっとの思いで作り上げそのまま冷やしておいた。 くたびれてうとうとしかけた時に、小さな掠れ声が聞こえてきた。 「…おかあ、さん…おかあさん…どこ?」 「レイチェ?俺は霙。訳あってこの世界に召喚されたんだ。 お母さんは近くにいるよ。でも、病気が移らないように別の部屋にいてもらってる。 熱が下がれば大丈夫だから。 暫くしんどいだろうけど我慢してね。」 「…えい?…ルースのおきさきさま?」 「うーん、何だかそうらしいね。 あぁ、汗びっしょりだ。着替えたほうがいい。 誰か女の人呼んでくるから待ってて。」 俺は扉の外でひしめく人達に声を掛け、年配の女性に着替えを頼んだ。 「霙様っ、お嬢、お嬢は助かるのですかっ!?」 「何度か汗をかけば徐々に熱も下がると思う。」 ほおっ…という安堵のため息が広がり騒めきが続く中、女性が出てきた。 「霙様、終わりました。」 「ありがとう。また着替えの時は呼ぶけどいい?」 「勿論です!」 俺はまた部屋に入ると、今度は少しドアの隙間を開けておいた。どうせ気になって覗くんだもんな。 「レイチェ、少し水を飲もうか。」 頷く様を見て、身体を少し起こしてやり水を飲ませてやった。 「えい、わたししなない?」 「ふふっ、大丈夫だよ。ねぇ、美味しい物食べてみる?」 「おいしいもの?なに?」 「アイスクリームって言うんだよ。 はい、どうぞ。」 少しだけスプーンの先に掬って口元に持っていった。

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