43 / 191
イスナの町で(2)
くんくんと匂いを嗅いで一瞬戸惑いを見せたレイチェだったが、ぱくんとスプーンに被りついた。
「……どう?」
「おいしいっ!えい、これ、なに?
つめたくってあまくって、すぐとけちゃった!」
「急に食べるとお腹壊すから、あとちょっとだけにして、残りは元気になったら食べようね。」
2匙ほど食べさせ水を飲ませると、レイチェはまだ食べたいと駄々を捏ねてはいたが、言い含めて横にしてやった。
「えい、ここにいて。」
「分かったよ。レイチェ、気持ち悪くなったりしたらすぐに言うんだよ。」
健気にも黙って頷いたレイチェは、またうととと眠りについた。
このまま熱が下がればいいんだけど。
俺の手紙は無事にガルーダの所に届いたんだろうか。
ルースは怒ってないのかな。
俺のせいで、ガルーダやジャティは罰を受けてはいないんだろうか。
みんな、勝手なことしてごめんね。
俺、どうなっちゃうんだろう。
いろんな思いがぐるぐる巡る。
とそこへ
「霙様…」
と、遠慮がちに俺を呼ぶ声がした。
ドアを見ると、俺をここに押し込んだ男が手招きしている。
え?俺また何処かに押し込められるのか?
恐怖が蘇り硬直していると、囁かれた。
「お食事の用意ができました。こちらへどうぞ。」
途端に空腹だったことを思い出した。
そう言えばさっきパン1個だったよな。
頷いて、そっと立ち上がった。
レイチェの荒かった息は、少し和らいだような気がする。
まだ熱い小さな頭をそっと撫で、念のため自分が戻るまで誰かついていてほしい、と言い残し、案内されるままついて行った。
俺が席につくと、数々の料理が並べられた。
この世界に来てから、シェフ達が作ってくれてた物と遜色もない程に。
「どうぞお召し上がり下さい。
お代わりも沢山用意してございます。
数々のご無礼、どうぞお許し下さい。」
片膝をつき左の手の平に右の拳を付け、頭を下げる男達。
最初とは真逆の対応をされて、俺はどうしていいか分からずフリーズしていた。
ともだちにシェアしよう!