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イスナの町で(4)

部屋に戻ると熱気が篭っていた。 心配そうにレイチェについていてくれた女性に、暫く換気をするように伝えた。 「あれからまた大汗で、もう1度着替えさせました。 その後はぐっすりお休みになっています。」 俺を見てホッとしたように囁くと、すぐに新しい水の入った手桶を持ってきてくれた。 おでこにそっと手を当てるとまだ熱いが、呼吸はさっきよりも楽になっているような気がする。 「ありがとう。 あなたも休んで下さい。後は俺が。」 「霙様…あなたにとって見ず知らずの、ましてやあなたを攫ってきたボスの子供なのにどうしてそこまで…」 「ふふっ、どうしてかな…分かんない。ただ心配なだけだよ。 お人好しの性格が発動してるのかな。 …ご飯まだでしょ?俺は今、沢山美味しくいただいたから、ゆっくりどうぞ。 レイチェが目覚めたら知らせるから。」 「霙様……ありがとうございますっ。」 膝を折り深く一礼すると、彼女はそっと出て行った。 レイチェは、ここの町のみんなからとても大切にされているみたいだ。 ボスの娘だから、という理由だけではない。 きっとこの子は優しくてこの町のみんなを愛しているからなんだろうな。 用意してもらった冷たい水でタオルを絞っていると、小さな声がした。 「……えい?」 「レイチェ?どうしたの?気持ち悪い?」 「ううん…ちゃんといてくれたんだ…」 「うん。ご飯食べる間だけいなかったけど、ごめんね。 タオル替えるよ。ちょっと冷たいけどごめんね。」 「うん。」 ぶるっ、と身体を震わせたレイチェの顔に、青い鱗のような模様が見え隠れするのに気が付いた。 あぁ、そうか。 この子は青い龍になるのか。 髪の毛の色も綺麗な青だし、ボスもイルネアも青だったよな。 俺の視線に気付いたのか 「えい、びっくりしないの?」 「だってここは龍の国だろ? 俺は異世界の人間だからずっとこの姿だけど、君達は龍体に変化(へんげ)できるじゃないか。 逆に俺の方が吃驚されるんじゃない?怖くない?」 「……えいはこわくない。」 レイチェの答えに泣きそうになった。

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