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イスナの町で(5)

それを誤魔化すように慌てて尋ねる。 「水飲むか?喉乾いてない?」 「さっきの…つめたいの、ほしい。」 「分かった。少しだけな。」 クッションを背中に当て座らせてやる。 どうやら熱も引き始めているようだ。身体の熱さがさっきよりも随分和らいでいた。 小さなガラスの器に半分くらいをペロリと平らげ、水を飲んだレイチェは 「えい、ありがとう。だいすき。」 と微笑んだ。 愛おしさが増し泣きそうになりながら 「早く元気になるんだぞ。」 と頭を撫でて横にしてやった。 回復に向かいつつあることに安堵し椅子に座った途端、緊張から解放されたせいなのか、どっと疲れが出てきた。 無意識に夢の世界に引き込まれそうになったその時、何やら外が騒がしくなってきた。 何だろう。また病人が出たのだろうか。 不安に思い窓の外を見ようと立ち上がると 「霙様、霙様。」 ()いた声に招かれ、ドアの側に行くと 「お医者様が到着されました! 国王ルース様も一緒ですっ!」 「えっ、ルースも!?何で!?」 「きっと霙様のことがご心配で…広間にご案内しています。 急ぎ霙様をお連れするようにとのことです。 こちらのことはご心配なく。 ご案内いたします。」 「いや、早くお医者様をこちらに向かわせて! レイチェを早く診てもらって! 他の高熱の子供達のところへも。早く!」 「ですが」 「いいから早くっ!」 俺の剣幕に、男は慌てて飛んで行った。 間もなく、囁き声と遠慮がちな靴音が聞こえてきた。 「失礼しますよ。」 「ドリナ先生っ!早くレイチェをお願いっ!」 「お妃様、そう慌てずとも。 どれどれ……お嬢ちゃん、私は医者だ。 君が元気になるように身体を診せてもらっても良いかな?」 この大騒ぎにレイチェは目を覚ましており、ドリナ先生の言うことにしっかりと頷いた。

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